赤字なのに日本一の役員報酬「ユーシン社長」は「次も同じ金額」

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 金銭に対する執着に、年齢はあまり関係ないようである。現在、役員報酬日本一の座に就くのは、自動車部品メーカー「ユーシン」(東京・港区)の田邊耕二会長兼社長(81)で、その額14億500万円。会社が赤字なのにと、株主からは異議が唱えられたが、本人は「次も同じ金額」を貰うと、どこ吹く風なのだ。

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 2010年3月期から、上場企業に1億円以上の高額報酬を得ている役員の開示が義務づけられた。

 故・樫尾俊雄カシオ計算機名誉会長が12年3月期に手にしていた13億3300万円がそれまでの最高額だったが、ユーシンの14年11月期の決算で、田邊氏がトップの座に躍り出たのだ。

 いったい、ユーシンとはどのような会社なのか。

 田邊氏の父、善吉氏が1926年、スイッチ類の製造会社として立ち上げ、戦後、自動車部品メーカーに転じ、97年に東証一部上場を果たした。田邊氏は、78年に社長に就き、2011年から会長兼社長を務めている。

 実は、ユーシンは14年11月期の決算で、売上高約1559億円を計上したものの、約4億円の赤字だった。

 ユーシンの株主で、投資家の山口三尊氏が憤然としてこう語る。

「田邊さんの13年の役員報酬は、8億3400万円でした。14年もせめて同程度に留めておけば、赤字は避けられたわけです。会社を赤字にしてまで役員報酬を増額するのは、経営者倫理が問われる。さらに、14年の役員報酬の総額は15億9600万円だったのですが、田邊さんの分を差し引いた1億9100万円を8人の役員で分けています。その役員のうちの1人は、田邊さんの娘。会社の私物化と批判されても仕方ないはずです」

 そのため、この2月に開かれる株主総会で、役員報酬の総額を5億円以内とすること、また、田邊氏の娘の役員解任などを株主提案するという。

■“成果が花開いた”

 果たして、怒れる株主からの訴えは届いているのか。

 田邊氏に聞くと、

「数年前から、会社の売上げは急激に伸びています。ですから、多少の赤字はなにも問題はありません。約20年前に、ハンガリーに工場をつくり、同業者に先駆けて、ドイツやイギリスの自動車メーカーに売り込みをかけてきました。ようやく、その成果が花開いたのです。次の期の役員報酬も大きく増えたり減ったりすることはなく、同じくらいの金額を貰います。また、娘のことについては、よその会社でも社長の息子や娘を役員にしているところは多いですし、うちが特別だとは考えていません」

 一向に気に留める様子はないのである。

 しかし、雑誌「財界」の村田博文主幹が指摘する。

「経営学者のドラッカーが唱えているように、企業は顧客、従業員、株主、地域社会の4つに対し、バランス良く貢献しなければならない。赤字にもかかわらず、多額の役員報酬を得るというのは、経営者としての感覚がずれています。その点を追及するせっかくの株主提案ではありますが、大株主は取引先や銀行ですから可決されるのは難しいでしょうね」

 富んでも鈍す、ということなのか。

「ワイド特集 大人たちの通過儀礼」より

週刊新潮 2016年1月21日号掲載

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