「1粒5万円のいちご」に「10万円の梅干し」……なぜそんなに高価なの?〈日本の超高級品ガイド(2)〉
記者自らが見聞しトライしてお送りする、「日本の超高級ガイド」。第1回では「2万円の緑茶」を飲んでみた。実を伴わないムダに高いものもあるなかで、今回接するモノの価値は、果たして。
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今度はいちごを追って西へ。岐阜県羽島市の「奥田農園」では、1粒100グラム超のいちご「美人姫」が生産されている。
「みなさんが目にする普通のいちごは、大きくても30グラムですよ」
と作り手の奥田美貴夫さん(61)が次のように続ける。
「もとは県が独自開発をしていました。18年前に『濃姫』という品種ができたのですが、それでも60グラムが限界。濃姫を大きく美味しく改良しようと始めたところ、80グラムくらいのものがポツポツできるようになった」
番狂わせでなく安定供給できるように。満を持して、メディアに公開したのは2009年のことである。
「ぼくは1粒1万円くらいでと思っていた。けれど県庁の方が、“県の特産品として応援します。いちごだから1つ5万円で”と言ってそうなったんです」
■10万円の梅干しを24個注文
こちらは一期一会と言わないまでも、申の年にだけ売り出されるから12年に一度のことである。10万円の梅干し「五福」を展開するのは、和歌山の「五代庵」。
「平安時代、ある天皇が病に苦しまれたおり、梅干しを入れたお茶を飲んだら快方に向かった。それが申年でしたので、縁起が良いという話が広まったのです。これを元に、『五福』を売り始めたのは24年前。今年で3回目になりますが、毎回1億円以上の売り上げがあります」(東善彦社長)
美濃焼の壷に入った梅干しは、最も高価な1・8キロの品で10万円である。中は60粒ほどで、壷代を無視すれば1粒2000円弱。先のいちごのように大きくて美味しいとかそういったことはなく、一般に売られているものと大差はない。
「スーパーの梅干しは、高くても1粒100円ですから20倍違うわけです。ただ、『五福』に込められた縁起の良さ、宗教観にそれだけの値が付いているということ。当初は“そんな高いものが売れるか!”という声がありましたが、無病息災の魔除けとして買ってくださる方もいる。返品されたことは一度もありません」
昨年11月から予約がスタート。6月に穫れた実で作り、11月に納品となる。
「驚いたのは、10万円の品を24個も予約してくださった方がいたことです」
と、東社長が続ける。
「中国の投資家のご夫婦でした。和歌山にチャーター機で観光に来られたのですが、縁があって『五福』のことを説明したら、感銘を受けてくださって……」
口先だけの商売か、物語の妙味か。
「特集 ムダに高いモノもある日本の超高級ガイド」より