マイク強奪!喧嘩で重体!「成人式」バカ騒ぎの現場報告

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 夏の参院選から始まる18歳への選挙権引き下げ。しかし、こうした騒動を聞くにつけ、「下げる」のでなく、引き上げる方が実態に適うのではないか、と思えてしまう。今年も暴れた、「成人式」の20歳。大人なら、眉を顰めるバカ騒ぎ――。

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 かつてその日は、新聞にサントリーが新成人にエールを送る広告を載せ、作家の故・山口瞳氏がメッセージを記していた。

〈成人式を迎えた諸君! 今日から酒が飲める。そこで、僕は、諸君に、「酒の上の失敗を怖れるな」と言いたい。思い切っていけ! ガンガン行け!〉

 昭和59年のそれは“若さ”の尊さを理解し、多少の過ちは許容しようと述べたものであるが、とても「失敗」では片付けられない以下の有様を見たとしたら、山口氏は果たして、どんな言葉をかけただろうか。

 水戸市で1月10日に行われた成人式では、新成人がステージに上がり、会を妨害する騒ぎが起きた。

「開会前から会場では、『打倒茨城県警』とか『全日本関東茨城狂走連』などと刺繍された特攻服を着た連中10人ほどが『いいちこ』を飲んでいた。何か起こるな、と思っていたんですけど」

 と振り返るのは、出席者の1人である。

「会が始まるとすぐに彼らはステージに上がろうとし、警備員に取り押さえられました。そんな様子に市長はビビッたのか、20〜30秒で挨拶を終えてしまった。あまりに早口で何を言っているのかちっともわかりませんでした」

 一方の「連中」はエスカレート。新成人の代表の「誓いの言葉」になると壇に上がり、マイクを奪って「なめんじゃねーぞ」「おめえが挨拶してんじゃねえー」などと叫ぶ。その後も、

「スピーカーのコードを引っこ抜く者もいれば、女子に“呑め呑め”と強要する者もいる。そして到着した警官約20名とにらみ合いになりました。警官の“謝れ!”の再三の呼びかけに、最後はリーダーの男が“すィませンした”とチョコンと頭を下げましたが、まさに一触即発でした」

 この“イベント”のために水戸市は148万円の公金を費やしたという。

 同じく370万円がかかった富山県高岡市では、市長の挨拶の最中、新成人がマイクを強奪、パフォーマンスを試みる“事件”が起こった。

「市長と彼を離そうと、無我夢中で背中に飛びつきました。あんな高いステージに飛び乗ってくるとはね……」(横にいた市議会議長)

■有象無象の集まり

 もっとも、これらの事態はまだ可愛いと言ってもよく、北九州市では、酒に酔った新成人が警官を突き飛ばして逮捕。和歌山市に至っては、会場内で酒に酔った新成人同士の喧嘩があり、顔面を殴打され、頭を踏みつけられた男性が急性硬膜下血腫で意識不明の重体に陥っているというのだ。

 福岡教育大名誉教授の横山正幸氏(青少年育成論)が、

「場での振舞い方をまったく心得ていない点において、完全に“子ども”。とても成人とは呼べません」

 と嘆くのももっともだが、評論家の呉智英氏は言う。

「20歳になったというだけの有象無象の集まりですから、騒ぎが起こるのは当たり前。一方で大人の自覚を持たせる方策は、何も行われていないわけですからね」

 つまるところ、喜ぶのは呉服屋と美容院のみ。いっそ出席しないのが、ホントの「成人」の嗜みとさえ思える、今年の現場報告なのである。

「ワイド特集 大人たちの通過儀礼」より

週刊新潮 2016年1月21日号掲載

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