「中国」「産油国」「北朝鮮」だけではなかった“東証独自の下げ要因”

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 この年初、日本の株式市場の前に複数の地政学的リスクが立ち塞がった。不安定な中国経済、3日に明らかになったサウジアラビアとイランの断交、そして6日に行われた北朝鮮の核実験である。

「北朝鮮の核実験については、ある程度リスクを織り込んでいるので、株安への影響は限定的です。また、これまで、産油国が集まる中近東で紛争が起これば、原油高になるのが常でした。ところが今回は生産過剰に加えてアメリカの利上げ前からドル高が進み、原油の下げは一向に止まらない。それが株安の要因の1つとなっている」(経済ジャーナリストの岩崎博充氏)

 ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏(シニアエコノミスト)もこう語る。

「原油安が続いていることで、産油国の財政は逼迫(ひっぱく)している。そのため、世界中の株式市場に投資していた資金を回収しなければならなくなっており、それも世界的な株安の要因になっているのです」

■日銀に対する失望

 不安定な中国経済と原油安。これらは世界中の株式市場に共通のリスクだが、前出の岩崎氏は、

「東証独自の下げ要因として挙げなくてはならないのが、日銀に対する失望です。米連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切った2日後の昨年12月18日、日銀は金融緩和の補強策を打ちだしました。これが、上場投資信託(ETF)の年間買い入れ額を3000億円拡大した程度で、市場が望んでいた“黒田バズーカ第3弾”には到底及ばないものだったのです」

 として、こう話す。

「その結果、もう日銀は手詰まりなのではないか、という観測を市場関係者に抱かせてしまった。また、今後、“黒田バズーカ第3弾”を打てたとしても、大した効果は得られないと日銀が考えているのではないか、という疑念まで呼び起こしてしまったのです」

 シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏もこう語る。

「日銀の補強措置は完全に期待外れで、その日、株価は一時的に前日の高値より上昇したのですが、終値は前日の安値よりも安くなってしまった。このような値動きは証券業界で“キー・リバーサル・ダウン”と言われ、翌日から相場が続落する兆候だとされている。昨年暮れあたりから東証はそういう下落トレンドにあり、そこに中国の株価下落が重なったのです」

「特集 お屠蘇気分を吹き飛ばした『株安』底値の検討」より

週刊新潮 2016年1月21日号掲載

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