“ジャラジャラジャラ~!”話法の使い手「ワールドメイト」深見東州代表〈なぜ「新興宗教」指導者の演説に惹きつけられるのか(2)〉藤倉善郎

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 カルト宗教に詳しいジャーナリストの藤倉善郎氏が、“カリスマ教祖”たちの話術を分析、その手法と技術を考察する。第2回の対象は、「ワールドメイト」の代表役員、深見東州氏(64)=本名・半田晴久=。特異な存在感を示す、深見代表の手腕は――。

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〈世界オピニオンリーダーズサミット トータルメインゲスト ビル・クリントン〉

〈進撃の阪神巨人 ロックコンサート!! 日本武道館〉

 数年前から、こんな珍妙なイベントの告知広告が新聞各紙に頻繁に掲載されていたことをご存じだろうか。広告主は、7万2000人の信者がいると称する「ワールドメイト」のリーダー、深見東州氏である。彼もまた実に個性的な教祖だ。教団が信者に配布しているDVD「ケース別開運法 宗教に入っていた人・いない人」(89年10月27日のセミナーを収録)では、スーツ姿で黒板にポイントを書き示しながら講演している。このセミナーで語られるのは、これまで宗教に入っていた経験がある人とそうでない人のそれぞれが、どのように「ワールドメイト」の教えを受ければいいのかという話だ。

 例えば、宗教に入っていた経験のある人は「神様に感謝する心を持っている」が、その一方で「団体独自のフィルターで何でも見てしまう。どこかがいびつで偏っている」と言う。そこで、「ワールドメイト」に入る上では、「今までの観念を捨てる」ことが必要だと説く。

 しかし、そう語る口調は決して力強くなく、むしろ終始穏やかで、学校の“眠たい授業”といった調子だ。

 その一方で別の配布DVD「深見東州の霊能秘儀600連発!!」では、信者一人ひとりに神の言葉を伝えていく「接心」という儀式を披露している。例えば、信者が「チ~ン」と言うと、それを受けて深見氏が「ジャラジャラ~!」と言ってジャンプし、おどけて見せる「チンジャラ接心」。どこが面白いのか理解に苦しむが、会場には信者の笑い声が響き渡る。

■AKB48の握手会のようなもの

 また、11年6月12日に新宿の京王プラザホテルで開催されたイベント「GパンJFK3000!!!」では、深見氏は『宇宙戦艦ヤマト』などのアニメソングを熱唱。“JFK”とは「じゃんじゃん布教しよう」の略だという。信者は目を輝かせて深見氏の歌に酔いしれ、その演説に耳を傾けた。

 一見、脈絡のない深見氏の演説と儀式、イベントの関係性について、パフォーマンスの世界を社会学的に研究し、政治家など著名人の演説にも詳しい、日本大学芸術学部の佐藤綾子教授(パフォーマンス学)はこう解析する。

「深見氏は『親和表現』と『コンシート話法』の使い手です。まず、『親和表現』とは簡単に言うと、相手に親近感を覚えさせることです。あらゆる場面で、彼の語り口は終始、優しい。その上で『GパンJFK――』では、途中で壇上から客席まで降りてきて、聴衆と同じ目線で話をします。人間は物理的な距離が近づくと、精神的に親近感を覚えるものなのです。深見氏が肩を叩く『ショルダー菊姫タッチ』で、信者が涙を流していましたが、これも効果的ですね。AKB48の握手会のようなものです。一方、『コンシート話法』とは、相手が予期していなかったことを急に言って驚かし、好印象を植え付けるというもの。『チンジャラ接心』などで彼が見せるおどけた動作や、普段から口にしている冗談が、これに当たります」

 要するに、優しくて偉大だと思っていた人間が意外にお茶目な一面を持っているところが、受けているというわけだ。

■「演技性人格障害」の可能性

 話し方だけではなく、コンサートの選曲にも工夫が凝らされているという。

「『宇宙戦艦ヤマト』などのアニメソングを歌って楽しい会を演出していますが、その後、一転してゴスペルの名曲『アメージング・グレース』を歌うシーンがあります。この曲のタイトルを直訳すると、『素晴らしき神様からの恩寵』。つまり、アニメソングで冗談っぽいコンサートだったのが、途中で一気に厳かな雰囲気になるということです。このギャップが重要だと言えるでしょう」(同)

 精神科医の片田珠美氏は深見氏の話し方について、「宗教家というより営業マン的だ」と分析する。

「セミナーでは『大本教』などの具体的な宗教名を挙げながら、“これはこういう宗教、あれはああいう宗教”と説明しています。おそらく、過去の新興宗教の成功例、失敗例をたくさん研究して今に生かしているのでしょう。服装に関しても、セミナーではスーツ、コンサートではジーンズと宗教家の雰囲気を感じさせません。黒板を使った講演では、何かの商品を勧めるように教えを説いています。とはいえ、話し方は極めて穏やかですが、“前世の業(カルマ)を晴らすには感謝、奉仕、布施をしなければならない”と脅しをかけて、お布施を促している場面もある。つまり、ソフトな物腰で警戒心を解いたところで、一気に営業をかけているわけです。多くの新興宗教に共通している、相手の欠乏感を刺激する、いわゆる『コンプレックス商法』には変わりがありません。精神科医として深見氏を診断すると、『演技性人格障害』の可能性がある。症状としては、自分が注目の的になっていないと耐えられない、過度に印象的だが内容のない話をする、芝居がかった態度をとるなどの特徴が挙げられます」

「特別読物 『池田大作』『大川隆法』『深見東州』 なぜ『新興宗教』指導者の演説に惹きつけられるのか――藤倉善郎(ジャーナリスト)」より

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藤倉善郎(ふじくら・よしろう)
昭和49年生まれ。大学中退後、フリーライターとなり、新興宗教、特にカルト団体に注目して取材を続ける。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』。

週刊新潮 2016年1月14日迎春増大号掲載

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