「先生に注意されたらムカつく」 逆ギレ大学生は何を考えているか
授業中に、居眠りや遅刻を注意されると、逆ギレするような大学生が増えており、その背景には「叱らずにほめて育てる」式の教育の蔓延があるのではないか――榎本博明氏の著書『ほめると子どもはダメになる』をもとに、そんな内容の記事を配信したところ、共感反発様々な意見が寄せられた。「たしかにそんな若者が増えた」という人もいれば、「注意の仕方が悪いのでは」という指摘をする人もいた。
それでは、当の「逆ギレ」をした若者はどう考えているのか。榎本氏は、実際に学生たちに話を聞いている。『ほめると子どもはダメになる』からその部分を引用、ご紹介してみよう。
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「叱られることに抵抗がある」
叱られる経験の乏しい学生たちと、叱られること、あるいは注意されることについて改めて話してみた。すると、正当な注意であっても感情的に反発する傾向があることがわかる。
授業中、やる気のない態度を取っていたら、先生から注意されてムカついた。そんな発言をある学生がすると、自分もそういうことがあるという者が続く。
――だけど、授業中にやる気のない態度を取っていたら注意されて当然なんじゃないの?
「そうかもしれないけど、やっぱりムカつくよなあ」(周囲も次々と同意を示す)
――でも、自分の態度が悪いわけだよね?
「そう言われればそうですけど、注意されたときは感情的になっちゃいますよ」
「先生だって授業で言ってるじゃないですか。人間は理屈で動くんじゃなくて感情で動く面が強いって。注意されればだれだってムカつきますよ」
注意された自分が悪かったという実感はほとんどないようなのだ。そのあたりを再度強調して問いかけてみると、わりと冷静にものを言うタイプの学生が、こう答えた。
「先生たちの時代と違って、これまでに怒られたことがあまりないからじゃないですか。明らかに悪いことをしても学校の先生に怒られるっていうことはほとんどなかったから、怒られるっていうことにすごく抵抗があるんですよ」
自分たちの事情をこちらにわかるような言葉で説明してくれた。それに別の学生も呼応する。
「そうなんですよ。僕たちは怒られたことがないから。バイトでも、ミスをして怒られるたびに我慢できなくて辞めてる友だちがいるし」
確かに自分の周囲にもそういう友だちがいるという者が多く、やはり叱られ慣れていないと、たとえ自分が悪くて注意されたのであっても、感情的に反発してしまうのだろうということになった。
「何が悪いのかがわからない」
また、態度の悪さを学校で叱られてきていないから、叱られたときに何が悪いのかがわからないということもあるんじゃないかという意見も出た。
「私も、友だちを見ててそう思います。バイトで遅刻して、先輩からめっちゃ怒られてキレたっていう友だちがいるんですけど、これまで遅刻したってたいして怒られなかったから、遅刻するのがそんなに悪いことだって思ってないんだと思う」
「さっきから話を聴いてて思ったんだけど、自分はこれまでバイト先で叱られるたびに逆ギレしてたけど、親にも先生にも叱られたことがなかったから、叱られることの意味がわからなかったんだと思う」
注意されるということに慣れていないと、叱られる=攻撃されているといった印象になるのかもしれない。
叱られ慣れていないため、「叱る―叱られる」という建設的な関わりを理解していない。そのため、「叱られる」=「怒ってて感じ悪い」「ムカつく」ということで反発することになる。
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榎本氏は、「叱らない子育て」のお陰で、厳しいストレスにさらされずに育ち、ストレス耐性が非常に低い人が増えたのではないか、と同書の中で述べている。そういう人への注意方法はなかなか難しそうである。