慰安婦像撤去ができない「朴槿恵」大統領に教えたい前例がある

国際 韓国・北朝鮮

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朴政権が慰安婦像を撤去するのは、現実的には至難の業

 歴史に学べ――。ことあるごとに歴史問題を持ち出す韓国は、壊れたテープレコーダーの如く、日本にこう突き付けてきた。この言葉を、熨斗(のし)をつけてそのまま朴槿恵大統領(63)にお返ししよう。慰安婦問題での日韓合意を受けてもなお、慰安婦像の撤去に呻吟している朴氏だが、それこそ韓国の過去の「歴史」に学べば、迷うことなく撤去に踏み切れるはずなのである。

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「あなたは何をする人ですか? なぜ、私たちを2度、殺そうとするのですか? どこの国の外交部(外務省)の人ですか?」

 昨年12月29日、ソウルでは異様な光景が繰り広げられていた。その前日の日韓合意に関して説明しようと、韓国外務省の林聖男(イムソンナム)第1次官が元慰安婦のもとを訪ねると、彼女たちが林氏に罵声を浴びせたのだ。

「あなたは日本の外交部の人ですか? なぜ、(日韓合意で)慰安婦像について触れたのですか? 話になりません」

 まるでサンドバッグのように、元慰安婦たちからの「雑言のパンチ」を受け続けた林氏。どうにか、

「おばあさん(元慰安婦)たちから見れば、(日韓合意は)不足があったのでしょう」

 と、彼が言葉を絞り出しても、

「不足どころか、全然足りない!」

 こう一蹴された挙句、

「これからも、さらに(私を)叱りつけてください」

 と、林氏は「懺悔(ざんげ)」せざるを得なかったのだ……。

 昨年末、電撃的な日韓合意によって、慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決」されることになった。しかし、韓国では不満が噴出。元慰安婦のために、日本政府が新たに設立される財団に10億円を拠出するにあたって、ソウルの日本大使館前に建てられている慰安婦像を、韓国が撤去することが「前提条件」となったからである。

■米国大使館近くの石碑は…

 無論、日本からすれば慰安婦像は撤去されて当然の代物(しろもの)だが、これを「象徴」として崇(あが)める元慰安婦、そして彼女たちを支援し、この像を設置した「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」は頑(がん)として撤去を拒む構えを見せている。その結果、「外務次官罵倒事件」にまで発展したのだ。

「大統領選挙の際に、候補者が事前に挺対協関係者に面会することで『元慰安婦擁護』のお墨付きを得るなど、挺対協の影響力は大きい。李明博政権の時には、韓国政府が5億ウォン(約5000万円)支援したりしていて、韓国の政権が挺対協の意向を無視して対日外交を進めることはできない状況が生じています」(在韓ジャーナリスト)

 したがって、いくら日韓の政府が合意したとしても、朴政権が慰安婦像を撤去するのは、現実的には至難の業と言えそうなのである。

悪韓論』(新潮新書)の著者で元時事通信ソウル特派員の室谷克実氏も、

「挺対協が慰安婦像の撤去に同意することはあり得ません。いざ、韓国政府が像を動かそうとしたら、彼らは座り込みを行うでしょう。こうした状況で、果たして朴大統領が撤去を決断できるでしょうか」

 ところが、灯台もと暗しとでも言うべきか、韓国事情に詳しいあるベテランジャーナリストは、

「韓国の過去の事例に倣(なら)えば、本来、慰安婦像を撤去するのは何ら難しいことではないんです」

 とした上で、朴氏にこんな前例を「指南」する。

「2002年、在韓米軍の装甲車が韓国の女子中学生2人を轢(ひ)いて死亡させる事故が発生し、韓国世論は沸騰。在韓米国大使館近くに抗議の意味で石碑が建てられました。しかしこの際、石碑の設置場所が公道であったことから、通行の邪魔になるとして、道路を管理するソウル市の鍾路(チョンノ)区は石碑を撤去しています。慰安婦像が建っているのも、同じ鍾路区の公道です」

 つまり、米国に対して取ったのと同じ態度を、日本にも見せてくれればいいだけの話というわけである。

 一陽来復。日韓関係に春の兆しが訪れるか否かは、日本に対して歴史を重視するよう訴え続けてきた朴氏が、これまでの自身の言動を顧(かえり)みて、石碑撤去という「自国の歴史」を学べるかどうかにかかっている。

「ワイド特集 剣が峰にて一陽来復」より

週刊新潮 2016年1月14日迎春増大号掲載

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