大凡戦「魔裟斗vs.山本KID」2つの理由を神様が解説する

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 紅白歌合戦の裏番組として久々に、しかも2局で放送された格闘技。とりわけ6年ぶりに現役復帰した魔裟斗(36)と、「神の子」こと山本“KID”徳郁(のりふみ)(38)の対戦が注目されたが、結果は大凡戦。その隠された理由を「神の子」の父、すなわち「神様」が解説した。

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 結論を先に言えば、平均視聴率はフジテレビ『RIZIN』のうち、ボブ・サップと曙の対戦などが行われた第2部が7・3%、TBS『史上最大の限界バトル KYOKUGEN2015』の目玉「魔裟斗vs.山本KID徳郁」が9・0%と、いずれもヒト桁に終わった。とりわけ前者は、

「曙が2ラウンドの途中で後頭部から出血して試合が中断し、ケガの手当などに20分以上も費やされてしまった挙句、そのまま終了。あまりに不甲斐ない内容に、格闘技ファンは大いに不満を抱いたはず」

 と、格闘技通のライターの高須基一朗氏が言うように、“妥当な”視聴率と言えそうだが、魔裟斗と山本KIDの対戦は、かつてに比べて寂しすぎる数字と言うほかない。スポーツ紙の格闘技担当記者が言う。

「格闘技ブーム真っただ中の2004年大晦日に行われた両者の戦いは、熱いものでした。たがいにダウンを取りながら、死闘を制したのは魔裟斗で、格闘技ファンならずとも熱視線を注ぎ、瞬間最高視聴率は31・6%を記録したのです」

 夢よもう一度、と願っても、簡単に問屋が卸してくれないのは世の常。今回は内容も、山本KIDが防戦一方に終わったが、実は、対戦者こそ同じでも、

「今回の試合が、11年前とはまったく違うことは、最初からわかっていた」

 と言って、記者はこう話を続けるのである。

「山本KIDはアメリカの格闘技団体UFCと専属契約を結んでいて、いわゆる他流試合には出場できない決まりがある。その問題をクリアするために、TBSは魔裟斗との対戦をエキシビションマッチと位置づけた。決してガチンコの試合ではないのです」

 で、その証拠に、

「2人ともスパーリング用の14オンスのグローブを使用していました。また、全身のタトゥーが放送コードに抵触するのでは、という声が上がっていた山本KIDは、吸水性が高いラッシュ・ガードというウェアを着てリングに上がりましたが、あれはトレーニング中に着用するものです」(同)

■「組むほうがおかしい」

 であれば、納得がいくのが2人の体重差である。

「11年前に比べ、山本KIDはかなり体重を絞り、現在は62・1キロ。一方、魔裟斗は復帰に備えて半年間トレーニングしたものの、当時より体重は増えて74・7キロ。その差は12キロ以上に広がって、まともな試合にならなかったのです」

 と高須氏。先の記者に補足してもらうと、

「ボクシングで言えば、魔裟斗はスーパーミドル級で、KIDはスーパーライト級。4階級も違う。KID所属のUFCの基準でも、魔裟斗はウェルター級でKIDはフェザー級と2階級差がある。かつては対戦相手との体重差が30キロ以上という例もあった総合格闘技も、今では試合は階級別に行われ、対戦可能なのは1階級差まで。魔裟斗とKIDの対戦は、本来ならあり得ないマッチメイクです」

 エキシビションマッチであればこそ許されたわけだが、ミュンヘン五輪のレスリング日本代表であったKIDの父、山本郁榮氏は納得がいかずにこう語る。

「十何キロも差があって、組むほうがおかしいんだよ。同じ体重であれば、徳郁のパンチ一発で相手は倒れるのに、体重が12~13キロも差があれば倒れない。アンフェアだと思います。体重は関係ないというのはダメですよ。ちなみに、(『RIZIN』に出場した孫の)アーセンの試合は体重がきちっとしていたからね。アーセンも相手も65・5キロ。だからいい試合ができるんです。徳郁はもう、言われれば“わかった”という感じで受けるけど、それでもハンデがありすぎます」

 それにしては、試合後に対戦した2人が、にこやかに談笑していた。

「そんな場面は、公式試合では決してみられない」

 と高須氏。エキシビションならではの演出だというのだが、KIDは悔しさをこらえていたのか。民放キー局の幹部に聞くと、

「民放が大晦日に4時間の特番を組む際、予算はおよそ1億円。格闘技はファイトマネー以外、さほどお金がかからず、予算内に収めやすいのです。ギャラは1人700万円ほど。魔裟斗も、今はタレントとして出演料が1回10万~15万円ほど。KIDもUFCでのファイトマネーは1試合100万円足らずで、ケガも多い。2人ともギャラに不服はなかったはずです」

 試合後の2人の笑顔には偽りがなかったようだ。

「ワイド特集 剣が峰にて一陽来復」より

週刊新潮 2016年1月14日迎春増大号掲載

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