壊滅か、拡大か、2016年「イスラム国」

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 年も押し詰まった12月28日、7カ月に及んだラマディ奪還作戦を成功させたイラクのアバディ首相は、TV演説でこう吼えてみせた。

「2016年は大勝利の年になる。過激派組織『イスラム国』は壊滅する」

「次は北部モスルの解放だ。それが最終決戦になる」

「イスラム国」殲滅を宣言すると、翌日、ラマディに入城、市庁舎にイラクの旗を高々と掲げたのだ。

 現代イスラム研究センターの宮田律氏は言う。

「20万人を擁したラマディは戦場となって1万人ほどに人口が減少、ゴーストタウン化していました。そこに政府軍が攻め込み、中心部を掌握、周辺地域も7割以上を制圧下に置きました」

 ある外信部記者は言う。

「有志連合の空爆も効果を上げたようです。29日、同司令部は過去1カ月間でイスラム国幹部10名を空爆で殺害したと発表しました。10名の中には、パリ同時多発テロに関与した人物も含まれているとしています」

 奪還作戦ではイラク政府軍に加え、イラン革命防衛隊の支援を受けたシーア派民兵が連携、英陸軍特殊部隊SASのスナイパー部隊も活躍した。他地域でも空爆が続き、クルド人部隊は勢力を拡大、トルコの特殊部隊も活動中だ。

 狭まる包囲網に年内壊滅の目もありそうだが――。

「一筋縄ではいきません」

 とは前出の宮田氏。

「イラク第二の都市で世界有数の石油生産地モスルはイスラム国の中心拠点。しかも残っている市民数十万人の大半はラマディ同様、スンニ派です。シーア派の政府軍や民兵を決して快く思っておらず制圧が困難な上、仮に制圧できても治安維持に不安があります」

 実際、制圧したはずのラマディで1月1日、自爆テロが起き、犠牲者を出している。

「そもそも彼らはゲリラ部隊。大きな拠点がなくとも活動できます。テロ組織のブランドに祭り上げられたため資金も支持者も事欠かず、事実、リビアにも展開を始めました。国際テロが拡大することが懸念されます」(同)

 ゴーストタウンばかり増えるのは阻止したい。

週刊新潮 2016年1月14日迎春増大号掲載

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