国会のバリアフリーが遅れている「乙武洋匡」参院選で100万票

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 気が早いのを承知で、お節介ながらシミュレーションである。夏に参院選出馬が取りざたされているタレントの乙武洋匡氏(39)。ベストセラー『五体不満足』の知名度もあって当確疑いなし、と言われる中、大いなる気がかりが……。

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 生まれながらに四肢がないという重い障害を持つ乙武氏は、テレビ出演などの傍ら、13年2月には東京都の教育委員に就任。幅広い活動を展開してきた。

 14年秋に行われた新宿区長選挙でも下馬評に上ったことがあり、今回は、

「12月10日、都教委は乙武さんが任期(4年間)途中の12月末で委員を辞職すると発表しました。が、その理由については『一身上の都合』としか明かされなかったのです」(都政担当記者)

 いきおい出馬は現実味を帯びる。水面下で各党がアプローチを繰り返し、中でも「日本を元気にする会」代表の松田公太参院議員は、同じ10日に“出馬を打診”と報じられている。あらためて松田代表に聞くと、

「私は『彼が選挙に出るならば、全ての政党が話をしたいだろう』と言ったのです。乙武君とは昔から知り合いで、月に一回は食事をする間柄。その中で色々な話をしますが、一般論として、自分の意見を多くの人に向けて強力に発信できるあたりは、政治家に相応しい人物だと思っています」

 そう称え、乙武氏の個人事務所のマネジャーも、

「今のところ出る考えはありませんが、複数の政党からオファーが来ているのは事実です」

 17日には「児童扶養手当の増額」要望のため、官邸で菅官房長官と面会し、重ねて憶測を呼んだ。いずれにせよ、真夏の“台風の目”となるのは間違いなかろう。

■「当選後では遅い」

 政治ジャーナリストの山村明義氏が言う。

「乙武さんの『五体不満足』は550万部を超えましたし、ネット上の発言にも多くの賛同者がいる。東京選挙区から出るとなれば、少なく見積もっても100万票は確実だと思います」

 10年の東京選挙区は、民主党の蓮舫議員が170万票でトップ当選。2位にダブルスコアをつけた圧勝だった。今回は、定数が1増えて改選数6となり、

「自民は現在、選挙区で2人目が決まっていないから、そこに入ってくれれば有難い、との思いはあるでしょう。実際に出るとなれば、蓮舫議員だって危ない可能性があります」(同)

 それでも、遠からず超えねばならないハードルがある。他ならぬ国会の「バリアフリー対策」である。

 参院のホームページでは、

〈障害のある方のために、車椅子用スロープや障害者対応エレベーター、障害者用トイレなどを設置〉

 そう謳われており、事務局に尋ねると、

「2階議場下は、車椅子の通行を可能とするため段差を減らした作りとなっています。演壇に上がる場合は別途スロープの設置が必要ですが、記名投票の際には、運営担当の職員『参事』に委託することができます」

 と言うのだが、一方で、

「これまで両腕に障害のある議員が存在しなかったため、対応については決まっていません。当選された後では遅いので、議院運営委員会の理事会などがタイミングを見計らって、どのようなサポートが必要か、非公式に検討していくことになるでしょう」(同)

 早過ぎる“当確”で迎える側も風雲急を告げているのだ。

「ワイド特集 敵もさる者 引っ掻く者」より

週刊新潮 2015年12月31日・2016年1月7日新年特大号掲載

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