超ド級の難工事 リニア「深さ1400m」の攻防

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 黒部ダム建設を題材にした石原裕次郎主演の『黒部の太陽』然り、青函トンネルの難工事を描いた高倉健主演の『海峡』もまた、大自然とヒトの攻防をスクリーンに蘇らせた大作である。

 それらに負けず劣らずの難工事が始まるのが、2027年開業予定のリニア中央新幹線。中でも工期が10年にも及ぶ南アルプストンネルだ。12月18日、山梨県早川町でJR東海が主催した起工式を機に、本格的な掘削を進める。

「山梨、静岡、長野の3県に跨る全長25キロの隧道のうち、着工した山梨工区は7・7キロ。トンネルの出入口は標高600メートル前後ですが、2500メートル級の峰々が連なる山岳地帯を出来るだけ傾斜を少なく水平に走らせるため、地表からの深さは国内で最も深い1400メートルに及びます」(社会部記者)

 東京と名古屋の間を40分で結ぶ計画のリニアにとって、南アルプスは越えなくてはならない壁なのだ。

「ここは中央構造線という断層帯があり、掘らなければわからない要素が多い」

 とは、地盤工学が専門の石原研而・東大名誉教授だ。

「映画『黒部の太陽』でもあったように、思わぬところから熱水が噴出して作業員を苦しめるかもしれません。地表から深くなればなるほど、高圧になった地下水脈が噴き出す場合もある。対策に手間取れば工期が延びる可能性もあります」

 入札で選ばれた施工者は、3社による共同企業体。中でも大成建設は、谷川連峰の下1300メートルを走る上越新幹線大清水トンネルにも携わった。今回はどんな“新技術”で挑むのか。

「他の工区の入札が済んでいない状況では、具体的な工法に関しては一切公表できません」(大成建設)

 リニアの総工費は約9兆円。トンネルの静岡と長野にかかる工区の業者は、2016年以降に決まるため、ゼネコン各社はなんとか採用を勝ち取ろうと、しのぎを削っているのだ。地上でも攻防は続く─―。

週刊新潮 2015年12月31日・2016年1月7日新年特大号掲載

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