世界最高点を連発でフィギュア採点のインフレ要因「羽生結弦」
日本中が“青天井”に沸いたバブル期のようだ。男子フィギュアの羽生結弦選手(21)の“株価”は、世界最高難易度の4回転ジャンプを武器にストップ高を繰り返している。大舞台で世界最高点を次々更新し、インフレが加速する“羽生相場”は、いつまで続くのか。
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男子フィギュアの羽生結弦選手
「ユズルに勝てる選手がいるとするなら、それは人間じゃない。宇宙人だろう」
外資系通信社の米国人記者が肩を竦(すく)めて言うように、“異次元の強さ”と評される羽生選手の快進撃は凄まじい。12月13日も、「グランプリシリーズ」ファイナルのバルセロナ大会で総得点の世界最高記録を更新する330・43点を叩き出し、男子史上初のシリーズ3連覇を達成したのである。
振り返れば2週間前に長野で開催された「NHK杯」でも、世界最高記録を更新する322・40点で優勝したばかり。が、米国人記者とは対照的に日本のスポーツ紙記者は至って冷静だ。
「確かに快挙です。しかし、その背景には昨年2月のソチ五輪以来、審判団に“羽生より高い得点を出せる選手はいない”という認識が広がっているから、と言われているんです」
どういうことなのか。
■高い得点を出す選手
「確かに、羽生のNHK杯での表現力やステップの巧みさは素晴らしいものでした。4回転ジャンプを成功させましたが、世界最高記録を更新するほど評価が高い演技をしたかと言えばやや疑問が残ります。ソチ五輪銀メダリストのパトリック・チャンや、今年3月の世界選手権で優勝したハビエル・フェルナンデスなどの実力選手も、負けずに良い演技をしていましたからね」(同)
羽生はこのNHK杯でも今回のファイナルでも、ショートプログラム(SP)では大きなミスは見られなかった。が、NHK杯の106・33点に比べてファイナルでは110・95点と4・62点も得点が伸びている。一方でNHK杯のフリーは216・07点だったが、ファイナルの得点は219・48点に留まった。同様に、完璧にジャンプをこなしたにもかかわらず、3・41点しか得点を伸ばせていないのである。
「短期間にほぼ同じ構成のSPで、大きく点数が変わることは珍しい。もちろん、羽生はSPが得意です。それでも前回に比べて大幅に点数が増えたのは、審判団が羽生は高い得点を出す選手というイメージで採点しているからです。フリーの得点が伸びなかったのは、先に演技をするSPで余りに高い得点が出たことで採点が控えめにされたというわけです」(同)
プロスケーターの渡部絵美氏も、審判の心理が採点に影響すると指摘する。
「最後の滑走者は、審判がその後を気にする必要がないので高い点数を付けられやすい。今回のGPファイナルのフリーと前回のNHK杯のSPとフリーの最終滑走者は羽生選手でした。羽生選手の実力は疑う余地がありませんが、どうしても審判の主観が入りがちな採点競技である以上、滑る順番が得点を左右することがあるのは事実です」
“羽生株”は当面、高止まりの気配である。
「ワイド特集 サンタクロースのすべらない話」より