「毎日新聞が飛び降りた」特ダネ解禁の裏事情 解決が遠のいた王将社長射殺事件(2)

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 12月13日、新聞各紙が一斉に王将社長殺害事件について「現場遺留品に組関係者のDNA」と“新事実”を横並びで報じた。こういった報道が出るということは一見解決が近いようにみえるが、それは大きな勘違いである。なぜ今回の“新事実”が飛び出したのか? そこからは新聞各紙の焦りと京都府警の苦衷が見てとれる。

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 今回の記事はいかにして日の目を見ることになったのか。そこには、“特ダネ”を巡る各紙の鍔迫り合いがあった。

「現場に落ちていたタバコの吸い殻に付着していた唾液のDNA型が、工藤会組員のものと一致している、という情報を各紙が徐々につかみ始めたのは、今年の夏以降でした。で、今回、記事が出る直前までには、テレビ局を含むほぼ全社がこの情報を把握していたのです」(全国紙の社会部デスク)

 そんな状況下で動いたのは、毎日新聞である。

「各紙に記事が載った日の前日夜、毎日が府警幹部に“書きます”と通告した。それを受けた府警幹部は毎日以外の各社に対して“毎日が書くようだ”と逆通告。それにより、各社横並びで記事が掲載されることになったわけです」(テレビ局記者)

 毎日が飛び降りた――今回のことは担当記者の間でそう表現されているといい、

「飛び降り、というのは、各社が情報を把握している中で、1社だけが抜け駆けのように先に書いてしまうことを意味します。しかも、今回の情報に関しては、事件から2年の節目を迎える12月19日には書いてよい、と府警側も認めていた。毎日はその日を待たずに飛び降りたわけです」(同)

 情報の解禁日は12月19日。それと共に府警側から出されていた条件があった。それは、“ブツの種類は書くな”というもので、

「つまり、現場の遺留品から男のDNA型が検出された、という書き方はオーケーで、タバコの吸い殻から、とブツの種類を特定して書くのはNG。毎日を含む各社、この条件を守ったのですが、ただ1社、朝日だけがタバコの吸い殻と書いた。そのため、解禁日を無視した毎日は出入り禁止、朝日は厳重注意を食らいました」(同)

 重要なのは、府警側が12月19日になったら書いて良い、と了承していたという事実である。何故、これほど重要な情報が公開されることにお墨付きを与えたのか。そこにこそ、府警の苦衷が現れている。

「特集 奥歯にモノの挟まった報道では読んでも理解不能! 新聞が一斉報道! 暴力団DNAで『王将社長殺人』捜査はこうなっている!」より

週刊新潮 2015年12月24日号掲載

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