“東京五輪は要らねぇ”銀座「久兵衛」が吠えるワケ

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 接待など食事の場面では、政治と宗教の話はタブーとされる。場所が高級な鮨屋となれば、オトナの対応が求められるというものだ。

 例えば、志賀直哉や北大路魯山人など文人墨客に愛された東京・銀座「久兵衛」。創業者は、ウニなどの「軍艦巻き」を考案した“革命児”でもある。

 そんな老舗が創業80年を迎え、名店集う銀座百店会発行の月冊子「銀座百点」に、その歴史を振り返る広告を出している。最新12月号は「久兵衛とオリンピック。」と題した8回目。1964年の東京五輪を控え、ホテルオークラとニューオータニから出店依頼があったとの思い出が綴られる。ああ懐かしき昭和――となるところ、話はまだ終わらない。

〈一極集中が叫ばれ続けているのに、今また東京とは、理解に苦しみます。ロンドンオリンピック開催中、招致パーティのために握りにも行きましたが、オリンピックよりもっとやるべきことがあるのではないかと思います〉

 新国立競技場のデザイン案が公表されて、五輪への期待が沸く中での“異論”。その真意を2代目主人の今田洋輔氏(70)に尋ねた。

「福島の復興も進んでないし、もっと他にお金を使うべきですよ。五輪で儲かるのは建設業者ばかり。中小企業はリスクを背負い商売してるのに、行政が税金を浪費するのは許せないね」

 でも、久兵衛さんの常連って、政治家のセンセイ方も多いのではないですか。

「昔は吉田茂、池田勇人など歴代総理が足を運んでくれたけど、今はあんまりだね。元々、そういう方たちをアテにして商売やっているワケじゃないから」

 失礼しました。で、“意見広告”は来年も続くとか。

「最後まで読んで貰わないと真意が伝わりませんからね。まだまだ書きますよ」

 ネタがなんであろうと、老舗鮨屋で“サビ抜き”はご法度のようである。

週刊新潮 2015年12月24日号掲載

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