【軽減税率】自民が公明案を飲むハメになった、その「首謀者」とは
コインに裏表があるように、「軽減」の背後には「負担」が控えているようだ。ある人物が“辣腕”を振るい、軽減税率の対象が拡大された。しかし、財政再建は遠のく上に、露骨な公明対策の感は否めず……。
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「『彼』は税の何たるかが分かっていない」
総理官邸によって更迭された自民党の野田毅前党税調会長は、消費税を10%に引き上げる際に導入する軽減税率の対象が広がったことを受けて、周囲にこう不満をぶちまけた。
また、野田氏の後任として自民党税調会長の座に就いた宮沢洋一・前経産相は、軽減税率に関する公明党との協議が思うように進まないと、オフレコで、
「『官邸』が譲らないんだ。官邸が……」
と、苦虫を噛み潰した表情で漏らした。
自民党税調の新旧トップが言う「彼」と「官邸」――。その詳細に入る前に、改めて軽減税率を巡るゴタゴタを振り返っておく。
■6000億円を先送り
〈軽減税率、公明案丸のみ〉(12月10日付日経新聞)
〈公明案のむ〉(同月11日付朝日新聞)
〈切り崩された自民〉(同日付毎日新聞)
新聞各紙は、軽減税率の自公与党協議をこう評価し、「自民完敗」と報じた。
「与党協議は、『限定的導入』の自民党と、『全面的導入』の公明党の戦いでした。そこに、思わぬ『第3のプレーヤー』が介入したわけですが……」
と、大手メディアの政治部デスクが解説する。
「自民党は、2017年4月に消費税を10%に上げる段階で、税率を8%に据え置く対象を生鮮食品に限り、その財源は4000億円に留める方針でした。一方、“庶民の味方”を標榜する公明党は、対象を加工食品にまで広げるべきだと主張。はじめは両党の税調会長同士で協議していたものが、途中から幹事長による協議に格上げされ、両党は鍔迫(つばぜ)り合いを続けました」
その結果は、先に新聞各紙の報道を紹介したように、公明党の主張が丸々通って12月12日に決着。その財源は1兆円に膨らんだ。そして、当初、自民党と財務省が用意していた4000億円を除く残りの財源6000億円は、「2016年度末までに法制上の措置を講ずる」と先送りされたのである。
「安倍自民」は、安保法制では数の力を存分に見せつけた。これに倣(なら)うならば、自公協議でも圧倒的に数で勝る自民党が強いはずだ。にも拘(かかわ)らず、軽減税率に関しては自民党が敗北。この数の論理を覆した要因が「彼」、すなわち「官邸」だった。
■公明を無下(むげ)にできない理由
「自民党税調のメンバーを取材すると、口々に『首謀者は菅官房長官』と、口を揃えます」
と、前出のデスクが「彼」の正体を明かす。
「菅さんは、今や霞が関の官僚が最も怖れ、総理と並ぶ実力者に登りつめていますが、彼は目下、公明党との関係を最重要視している。そのため、軽減税率でも身内の自民党の反対を押し切ってまで、公明党に譲歩したんです」
全国紙の政治部記者が後を受ける。
「菅さんの公明党配慮の起源は7年前に遡ります。08年、時の総理の麻生さん(太郎・現財務相)が率いる自民党で、菅さんは選対副委員長として選挙対策を担っていました。この時、彼の創価学会側のカウンターパートは佐藤浩副会長でした。以来、菅さんは創価学会とのパイプを一つの政治的基盤とし、自民党内でのし上がっていった。したがって、公明党を無下にできないんです」
「特集 軽減税率を政争の具にした愚! どこへ行った財源と財政再建! 公明党に6000億円を貢いだ『菅官房長官』の前方視野」より
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