「5・6発ぶっとばしていいですか?」冒陳で明かされた弁護士の痛々しい“被害状況“ [股間枝切り鋏事件]

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 11月26日に開かれた第2回公判では、件の事件に関する「小番一騎(こつがいいっき)」と被害者の「国際弁護士」、そして小番の妻で弁護士と不倫関係にあった「A」の関係性が赤裸々に明かされた。そこで読み上げられた冒頭陳述は「小番の奥さんと被害者のセックスに関する話ばかりで、驚きました」(傍聴人)という内容で、Aと弁護士との逢瀬についても克明に綴られている。

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 最初の情事があったのは昨年12月。以降も、2人は逢瀬を重ね、時に、

〈Aは、同ホテルで貸し出していた有料のコスプレ衣装である体操服とブルマを着用し、カラオケを歌った〉(冒頭陳述より)

 といった形で関係をもった。しかし、7月27日には、

〈被害者がAのことをあだ名で呼ぶと、Aは、「やめましょう」と答え、被害者がAにキスをしたところ、Aは、「やめましょう」、「よくないです」と、初めてキスを拒絶する言葉を被害者に伝えた〉

 Aは被害弁護士の事務所に勤務を続けつつも、2人の関係性に“変化”が生じつつあった。そこから事件発生日の8月13日へと繋がった経緯は、以下のとおりである。

■「セックスは2回だけ」

 事務所の食事会で帰りが遅くなったAさんを咎めた小番。けんかになり、離婚話まで浮上した。小番と別れたくなかったAさんは、ストレスが溜まっていた理由を「上司からのセクハラ」に帰した。

〈最初は、被害者から「キスされかけたから悩んでいた」と述べたが、被告人(小番)から追及を受け、「キスされた」と答えた上、被害者と2回だけ肉体関係を持った旨の嘘を話した〉

 小番は強いショックを受けた。Aさんが被害者に無理やり姦淫されたと思い込み、被害者を相手に、民事訴訟、刑事告訴、弁護士懲戒請求すると宣言したのだ。

 事実、8月8日にふたりで新宿警察署へ赴いたり、小番自身が、Aさんに被害者と肉体関係を持った経緯をしつこく訊いたりしている。Aさんがそれこそ、“嫌がる素振りなく”ラブホテルへ行ったことについて、

〈「拒否してほしかった」と言うなどした。また、被告人は、Aに「強姦と思ってないの」と尋ねた際、Aが「私が拒否しなかったという負い目があるから、強姦とは認識していない」と答え〉ている。

 むろん彼女は、半ば口をぬぐって、「セックスは2回だけ」と嘘をつき通したのだった。

 元プロボクサーで慶応大学法科大学院生だった小番だが、卵は卵で考えた。被害者を強姦罪に問うのは困難だとしても、セクハラで訴えることは可能ではないか。被害者と面会した際にその言質を取るためのシナリオを誂(あつら)えよう。それが、「台本」というタイトルで始まる文章である。

〈「あなた大変なことをしてくれましたね」、「この事務所内でのAに対する強姦行為」、「周到な準備で拒めないようにしてホテルで無理矢理連れ込んで姦淫した卑劣な行為」、「いきなりキスをするという複数回の強制わいせつ行為」、「どう責任とってくれるんですか?」〉

 として、

〈Aが告白に至った心境が「セクハラ被害者、性犯罪被害者の心理そのもの」であり、それぞれの事実経過が「周到に計画され」た「犯罪」であると断じた上、「絶対許さねえぞ」、と書かれていた〉

 生き馬の目を抜く米国で鍛えられた国際弁護士に対峙し、言い負かされぬために、未熟な卵としてはアンチョコが必要だったのだ。これと相前後し、小番は渋谷駅近くの東急ハンズに立ち寄って本件凶器である枝切り鋏と包丁1本を購入。彼女にはこう嘯(うそぶ)いた。

〈「殺さないよ」「お守り代わりにしたいんだ」〉

■〈左手で陰茎を取り出し、右手にもったはさみで……〉

 事態が劇的に動くのは、犯行前日の12日夜のことである。「台本」にはない筋書きがAさん主導で展開されていったのだ。

 彼女は小番から「台本」の文章データを受け取り、これを明くる午前6時前に、被害者弁護士にメール送付。間髪容れず弁護士へ、「自分が作って旦那に送ろうとしたもので、読まずに消してほしい」旨のメールを続けた。同時に小番には「台本」を被害者に“誤送信”したと明かす。小番は、手の内を知られたと焦りつつ、

〈被害者も焦っているはずであり、むしろ今から被害者を問い詰めれば、被害者がボロを出すかもしれないと思い〉、直ちに事務所に向かった。そしてその際には、〈被告人は、被害者の陰茎を前記はさみで切断〉することを考えていた。

 ふたりは事務所最寄りの地下鉄虎ノ門駅で降り、小番は付近のコンビニで、「台本」のデータをプリントアウトした。弁護士は悲劇の関頭(かんとう)に差しかかっていたのである。

 午前7時半頃、被害者は既に出勤し、デスクの前にいた。Aさんを伴って乗り込んだ小番は、「台本」に従って被害者を詰(なじ)ったものの、

〈被害者は、落ち着いた態度で、Aと肉体関係を持ったことを認めて謝罪しながら、無理矢理という認識がなかった旨答えた〉

 ままならぬ事態に小番は、

〈「とりあえず、5・6発ぶっとばしていいですか?」「僕は別に積み上げてきたものとかないので」と述べた上、被害者の顎や右頬に向けて、足を踏み込んで、左右の拳骨で数回殴打すると、被害者が仰向けに倒れた〉

 引き続いて、

〈被告人は、持っていたリュックサックから前記はさみを取り出し、被害者のズボンを脱がせ、左手で陰茎を取り出し、右手に持ったはさみでこれを切断した〉

 切り取られたペニスは、小番の手で共用トイレに流されてしまう。

〈錯乱した被害者が「あれ、ここどこ」、「何で血出てるの」と言っていたのに対し、「切ったんです」、「あなたがAを強姦したからですよ」、「少なくとも姦淫はしたでしょ」と告げて、笑い声を上げるなどした〉

■どす黒い血尿

 革命戦士が本意成って、廟堂(びょうどう)に立った心持ちだったのか。受難の弁護士は緊急手術を受けたが、その際に、

〈陰茎が根元から1センチ程度しか残っておらず〉、〈現在、被害者は、小便用便器での排尿は不可能〉、加えて、〈尿道口の狭窄を来たし、定期的に通院・拡張を必要とする状態で、定期的に拡張を行うか、陰茎再建を行わない限り、確実な排尿機能は担保されないほか、性交ができず、生殖機能は完全に失われた〉

 また、事件から1週間あまりに亘ってどす黒い血尿が連日大量に出ていたほか、

〈現在も股間に激痛が走るため、座薬を使って和らげている状態である〉

「特集 紳士諸兄が肝を冷やした冒頭陳述 枝切り鋏事件『三角関係』頂点にいた女の役回り」より

週刊新潮 2015年12月10日号掲載

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