スポーツ選手の恋愛は是か非か 美談ですまない「女性アスリート」過酷の日々(5)
"恋愛"の是非
そんな競技生活が大きく変わったのは、25歳で結婚してからだ。夫も元陸上選手で同じ大学で男子陸上部マネージャーを務めていた。結婚後は夫が専任コーチとなり、競技を支えてくれた。
「夫が食事も作ってくれたので、いろいろなものをしっかり食べるようになった。結婚前は食生活が偏って体重の増減も激しかったけれど、ちゃんと食事をとるようになって体調が良くなり、筋肉もついて大きなケガをしなくなりました」
娘を出産して精神的にも強くなった。北京五輪後はマラソンで世界を目指し、練習量もさらに増えた。体脂肪率も一桁台になったが、出産後は月経不順もない。
「コーチの夫には体の不調や故障も何でも話せた。心身ともに支えてもらえたことが大きかったですね」
大学時代から交際相手がいたことでストレスを発散できるひと時も過ごせた。厳しいチームでは恋愛禁止のところもあるが、女子選手には恋愛もプラスになるのではと、赤羽さんは思う。
昨年1月の大阪国際女子マラソンで「ラストラン」を飾り、日本人トップの2位で満場の歓声に包まれた。フルマラソンは14回、「まさか34歳まで走るとは思わなかった」と、赤羽さん。
今、スポーツジャーナリストとして女子選手を見守る増田明美さん(51)は言う。
「長く競技を続ける選手が出てきたのは素晴らしいこと。しかし、女性選手が抱える心と身体の苦悩は変わりません。殊に男性の監督には、生理が来ないとは言い辛く、問題意識を持たない現場の指導者もいる。今はこれだけスポーツ科学が進んでいるにも拘らず、女性の体に関する知識が伴っていないように感じます。これからは選手の目標も多様化し、環境も変化していく中で、それに寄り添った支援が大切だと思いますね」
今、女性アスリートが求めているのは、心と身体を支えていくための環境。5年後の東京オリンピックを見据え、メダルヘの扉を開くカギとなるはずだ。
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