元女子フィギュア・鈴木明子さん「160センチで32キロ」 美談ですまない「女性アスリート」過酷の日々(2)

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160センチ、32キロ

 苦悩の中、実家へ戻ると、病院で摂食障害と診断された。そこで医師に言われたのが先の一言だ。体重は32キロまで落ちた。鈴木さんの身長は160センチ。これでは、スポーツどころか、日常生活にすら支障をきたすほどの痩せ方である。

 それでもリンクヘ戻りたい一念が、病気を克服する力となった。野菜、豆腐と少しずつ食べられるものを増やし、半年後に大学へ。40キロまで戻したところで練習を許された。栄養指導を受けながら地道に「肉体改造」を続けると筋肉の質も変わり、3年で完治した。

 しかし、選手復帰後も、オリンピックを目指して身体を追い込む中で体脂肪が減り、体脂肪率は一時5%を切るほどだった。試合シーズン中は無月経というサイクルが引退まで続いたと、鈴木さんは言う。

「フィギュアでは、身体が軽い方がジャンプを軽々跳べ、細いほど空気抵抗がないので回転も速くなります。でも女性の身体に成長する過程で丸みをおびると、小さい頃に出来ていた技が出来なくなり、体重が増えると足に負担がかかりケガをしやすい。そこで食事に気遣わなければいけないのに、選手は痩せたいばかりにダイエットの情報などに惑わされがち。私も苦しい時期はあったけれど、その先に幸せな競技生活が待っていた。健康あってのスポーツだから、自分の身体に目を向けてほしいのです」

歌代幸子(うたしろ・ゆきこ)
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、女性誌の編集者などを経て独立し、ノンフィクションライターとなる。スポーツ、事件、教育など、さまざまな分野を取材し、記事を執筆している。著書に『私は走る―女子マラソンに賭けた夢』など。

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

「特別読物 生理は止まる! 骨密度は老人並み! 美談ですまない『女性アスリート』過酷の日々――歌代幸子(ノンフィクションライター)」より

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