メイド・イン・ドイツ『病気治療は血液クレンジングから』に“百害あって一利なし”
世に多くはびこる“健康本”の数々。中には、医療先進国ドイツから導入されたという健康法も、普及してきている。それを取り上げているのは、『病気治療は血液クレンジングから』という書籍だ。
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メイド・イン・ドイツ『病気治療は血液クレンジングから』に“百害あって一利なし”
著者である赤坂AAクリニックの森吉臣院長は、アンチエイジングこそ21世紀の医療であると確信し、05年にクリニックを開業すると、血液クレンジングを手掛けるようになった。
それは、どのようなものなのか。
森院長の本によれば、患者から100~250ミリリットルの血液を採取し、専用のガラス容器のなかで強い酸化力を持つオゾンガスと混ぜ合わせてから、再び体内に戻す。すると、血液が活性化し、体内を循環するのに伴い、臓器の細胞も順次活性化される。その結果、がんやアトピー、腰痛にまで幅広い効果が期待できるという。
とはいえ、やはり、他の医師からは冷ややかな視線が向けられている。
■きわめて危険
まずは、『医者が絶対にすすめない「健康法」』などの著書がある、新潟大学の岡田正彦名誉教授が懸念を示す。
「だいたい、体外に血液を出し、また戻すという行為が極めて危険です。細菌感染を避けるために無菌状態を保たねばなりません。クリニックレベルでは、それは難しいというほかない。加えて、血液は凝固するのでわざわざ血栓をつくるようなもの。もし、それを避けるために、ガラス容器に凝固防止剤を塗っているとしたら、今度は、その副作用の心配もあります」
百害あって一利なしだと切り捨てるのだ。
それに対し、森院長は、
「これまでの足りないものを補うという治療法から、毒出し、すなわちデトックスというものが新たに出てきました。さらにそこから、血液クレンジングによって細胞を活性化させるという段階に進んでいるのです。凝固防止剤も正しい用量なら副作用はないですし、当院では10代から80代までの2万人に実施していますが、事故は一例も起こっていません」
と反論する。
だが、『健康法で死なないための42のカルテ』の著書がある、東京有明医療大学の川嶋朗教授も懐疑的な意見だ。
「オゾンガスを混ぜると、血液は酸素を多く含んだ鮮やかな赤色に変化する。それをもって、クレンジングと称しているのでしょうけど、人工透析と異なり、オゾンガスでは血液は浄化できない。血液クレンジングを行っても、がんやアトピーの根本的な治療にはなり得ないのです」
言うまでもなく、血液クレンジングには保険が適用されず、1回につき2万円ほどかかるという。
「特集 巷にはびこる『怪しい健康法』の真贋判定」