島を追われた「素っ裸おじさん」と地元民との“フクザツな関係”

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 無人島暮らしをする「ナガサキおじい」こと長崎真砂弓(まさみ)さん(79)は、この生活を四半世紀近く続けている。好きな時間に起き、食事はタケノコやニガナ(沖縄特産の野菜)など。魚も獲っていたが、“何だか可哀そうになって”最近は獲らない。たまにボートに乗って買い出しに行くほかは一糸まとわぬ姿の彼を目当てに、マスコミや観光客が多く訪れる。

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無人島暮らしをする「ナガサキおじい」こと長崎真砂弓さんはそれまで暮らしていた「外離れ島」を離れ、3~4キロ離れた「モクタンの浜」へ引っ越した。その理由とは?

 今から1年ほど前、長崎さんはそれまで暮らしていた「外離(そとばなり)島」を離れ、3~4キロ離れた「モクタンの浜」へ引っ越した。その理由を本人に聞くと、顔を曇らせるのだ。

「やっぱり大きかったのはフジテレビの番組(めちゃ×2イケてるッ!)に出たことだったと思う。あれで取材や観光客がどっと来てしまってね。いろいろ文句を言う人がいたんだと思う。僕が観光客に媚を売る必要はないけど、連れてくるのは西表の人たちだから。その人たちの手前、冷たくはできないよ。それもあったところに、地主の家族やその知り合いがやってきて、“出てってくれ”と言われたんだ。外離島でヤギ牧場をやるとか、シイタケ畑をやるからというのが理由だったな」

■真似する輩も

 テレビなどで取り上げられ、観光客が増えたという声がある一方、実のところ、おじいの存在をめぐっては地元でも賛否が分かれている。

 例えば、おじいに退去を迫ったのは、近くの集落・船浮の住人だ。その人物が言う。

「たしかに長崎さんに出て行くようにお願いしたのは私さ。東京の隅田川沿いだってホームレスが住んでいたら退去させられるでしょう。それを、自然が豊かで人が少ない西表だからと言って許される問題じゃない。年頃の女の子がいる家族連れがやってきて裸の長崎さんを見たらどう思うかね。私はテレビの番組を見たから出てけって言ったわけじゃないけど、真似する人が出てくるのも困る。実際に去年の春頃、長崎さんの真似をしてフルチンで暮らしていた人が隣の“内離(うちばなり)島”に現れました。長崎さんのことを“センパイ”って言ってたな。“あんた、自分の地元でそんなことが出来るかね”と言ってやったら、いつの間にかいなくなったけどね」

 また、地元のホテルの女将に聞くと、

「長崎さんはあんな生活をしているけど、話してみると意外にまともで挨拶もする。地元で特に悪い評判はないんです。だけど、迷惑ではないのかと聞かれたら迷惑だし、心配もあります。このあたりの人たちは、当番制で消防や行方不明者の捜索を任されているんです。勝手に死なれたりしたら困るのは地元の住民ですから」

 ナガサキおじいには、さらなる“追い打ち”もかかっている。今年の9月17日、「モクタンの浜」からも立ち退くよう、林野庁から通告を受けているのだ。

「外離島の長崎さんが住んでいた場所は私有地でしたが、モクタンの浜は国有林なのです。だから、長期のキャンパーなどを見かけた場合、注意しないわけにはいかない。長崎さんは“分かりました。他に場所がないか検討します”と言ってくれてはいますが、ずっと住み続けるのなら、いずれ退去命令などを出さなくてはならない。個人的には可哀相な気もするのですが」(祖納森林事務所の担当者)

■死んだら台風で……

 もちろん、おじいも自分の置かれた立場はよく分かっており、次に住む浜(私有地)もすでに見当をつけていると言う。ただ、毎日を懸命に生きているだけ、と話すのだが、地元の人が心配するように、万が一のときはどうするのだろう。

「遺体ってのは福岡まで送ると100万円ぐらいかかるらしいんだ。だから、死ぬときは台風で持ってかれるのが一番なんだがなあ……」

 都会では“孤独死”が社会問題になっている。一方で、勝手に野垂れ死にすることも許されないのが、今の世の中だ。ナガサキおじいと、彼を見守る西表の人たちの思いもまた、複雑である。

「特集 日本でただ一人の好事家『ヌーディスト』の受難 『素っ裸おじさん』が西表の無人島を追い出された顛末」

週刊新潮 2015年12月3日号掲載

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