「北の湖」没して残った遺産は「九重親方」復権闘争はっけよーい!

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 映画の世界ではエンドロールが流れれば「ジ・エンド」となるが、連綿と人間ドラマが営まれる現実世界はそうはいかない。ある人の「死」は、別の人にとって新たな「始」であったりする……。日本相撲協会の北の湖理事長の急逝を受け(享年62)、九重親方(60)=元横綱千代の富士=の動向が注目を集めている。復権に向けて、彼はどう「始動」するのだろうか、と。

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九重親方

 11月20日、直腸癌を患っていた北の湖理事長が亡くなると、相撲関係者の間では、九重親方の「振る舞い」が話題になった。

「横柄な態度で有名な九重親方は、普段、記者が話しかけても『オラッ』と一喝することが多い。そんな彼が北の湖理事長の訃報に際し、長々とコメントした。大先輩の死を悼む気持ちとは別に、何か『期する』ものがあったんでしょうね」(相撲協会関係者)

 その九重親方の「心中」を推し測るには、近年の彼の転落人生を振り返っておく必要がある。

 昨年1月に行われた相撲協会の理事候補選挙で、当時、協会ナンバー2の地位にあった九重親方は理事に残れなかったどころか、会社でいえば平社員の地位に落ち、閑職に追いやられた。しかし彼に、

「同情は集まらなかった」

 と、角界事情に詳しいジャーナリストが解説する。

「トップの座を窺(うかが)っていた九重親方にとって、八角親方(元横綱北勝海)や貴乃花親方を可愛がる北の湖理事長は目の上のタンコブでした。そんな折の昨年の理事候補選挙直前に、北の湖とパチンコ利権に関する記事が雑誌に載った。リークしたのは九重親方の周辺との噂が立ち、結果、北の湖側の反撃に遭って九重親方は干されたと言われています。しかし、日頃の『行い』もあって、彼の不遇は自業自得と見られたのです」

■「早くも手下が…」

故・北の湖理事長

 いずれにせよ、北の湖理事長という「重石」が外れることを見越し、九重親方は早くも動いていたようだ。

「北の湖理事長が車椅子で移動しているとの情報を得て、急死する数日前から九重親方の手下である佐ノ山親方(元大関千代大海)が、若手の親方に何やらヒソヒソと声を掛けていた。来年1月の理事候補選挙で、九重親方に票を回せという勧誘でしょう」(前出関係者)

 無論、「反九重勢」も黙っていない。

「理事候補選挙を待たず、12月18日の理事会で、八角親方を理事長代行ではなく正式に理事長にする段取りを決めた。新理事長は八角親方という既定路線を作ってしまい、コロコロ替えるべきではないとの理由から、理事候補選挙後も『八角理事長』体制を維持するつもりです」(同)

 相撲評論家の中澤潔氏は、

「人望がない九重親方は5票しか集められておらず、理事に返り咲くために必要な9票まで盛り返すには、いくら北の湖理事長が亡くなったといっても、相当の“実弾”をばら蒔くくらいしか手はないでしょう」

 九重親方の復権に向けた闘争は、「はっけよーい!」の声がかかっているものの、どうやら「うっちゃり」でしか勝ち目はなさそうだ。

「ワイド特集 絶頂期の盲点」より

週刊新潮 2015年12月3日号掲載

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