日本を自爆攻撃から守る防諜組織「警視庁外事3課」

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 標的にした相手に巧みに近づき、弱みを握ると恩を着せ、なかば強引に協力者に仕立て上げる。彼らの目的は“逮捕”ではない。テロの情報を先回りして掴み、世に知られぬまま葬ってしまうから、事件が表に出ることは殆どない。それが、国際テロを防ぐ通称「ソトサン」こと警視庁外事3課の仕事だ。

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「ソトサン」の仕事とは――

 日本には10万人を超えるイスラム圏出身の外国人がいると言われている。もちろん、そのほとんどが穏健な信者で、過激な行動もほぼ皆無だ。だが、まれに不穏な人物が入り込んでくることがある。2002年から03年にかけて日本への出入国を繰り返していたアルカイダ系組織「ルーベグループ」のリオネル・デュモンという男だ。

「フランス国籍のデュモンは03年12月にドイツで逮捕されるのですが、日本で立ち寄った関係先を捜索したのが警視庁公安部外事3課でした」(公安担当記者)

 この外事3課、どんな活動を担当しているのかほとんど知られていないが、

「警視庁公安部には外事1課から3課まであり、1課はロシアや東欧と不正輸出の担当、2課は北朝鮮と中国、そして3課が国際テロの情報収集を行っています。陣容は洞爺湖サミットの時に増やされ、東京五輪が決まったためさらに拡充されると聞いています」(同)

 捜査員の数を警視庁は公表していないが、数年前で約140人。課は3グループに分けられ、それぞれ「分析」「資料」「追及捜査」などに分かれている。

 ジャーナリストの黒井文太郎氏によると、

「ソトサンの重要な仕事の一つは在日イスラム教徒の調査です。たとえば、都内のモスクに行って、そこの指導的な役割を果たしているのはどんな人物なのかを調べたり、アラブ料理店のオーナーの素性を洗い出したりする。また、アメリカでのカウンターパートはCIAですが、依頼を受けてパキスタンやイランのイスラムグループが日本で交信している相手を調査したりするのです」

■捜査情報が流出

 地味な作業の連続だが、時として世間の注目を浴びることもある。昨年10月、「イスラム国」に参加するため、渡航準備していた北大生の関係先を「私戦予備・陰謀」の容疑で家宅捜索したのだ。

 日本から初の「イスラム国兵士」が誕生するのを事前に防いだ事件だが、すべてをガードできるわけではない。

「10年10月に外事3課の捜査情報が流出し、大問題になったことがありました。この際、同課がイラン大使館員の銀行口座を調べていたことが発覚しましたが、一方で、一国の防諜機関にしては法的権限が弱すぎることも分かってしまった」(同)

 公安総局(DGSI)がひとたびマークすれば電話盗聴など当り前のフランスでも、今回のテロは防げなかった。イスラム国のテロリストがひそかに入国していたら、「ソトサン」はどこまで戦えるのだろうか。

「特集 7人のテロリストで死傷者480人 自爆の爆薬は『魔王の母』 パリを硝煙の都に変えた『イスラム国』に次がある!」より

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

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