[尼崎事件]家庭ピラミッドではプードル以下だった右腕 角田美代子の「暴力担当の供述調書120枚」(5)
「尼崎事件」の主謀者・角田(すみだ)美代子を支えた李正則(41)は、3件の殺人を含む最多の10の罪で起訴された。まさに美代子の“右腕”というべき存在である。現在、無期懲役の一審判決が下されているが、彼は「美代子ファミリー」の中では“ペット以下”の存在だった。
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「尼崎事件」の人物相関図
正則は、12年12月16日付調書でファミリーについて、
〈血の繋がっていない、寄せ集め的な家族〉
と表現している。美代子の餌食となり命を落とした人もいれば逃げおおせた人もいて、正則を美代子に引き合わせた継父も、一時は監禁下で虐待されながら、脱走して難を逃れている。
〈死体の処理をさせられるようにもなり、本心では何で俺がこんなことせなあかんねん。自分でせえや。と不満を持っていました。本当にこのババア殺してもたろかと殺意を持ったこともあります。でも、そんな時に、私の頭には美代子のバックには山口組の大幹部がいる。私も本当に殺されるかもしれないと考えてしまい、躊躇したのです〉(同)
現に事件発覚後、暴力団など「黒幕」の存在が報じられたことがある。が、実際にはファミリーの一員いわく、
「正則のツテを使って暴力団との関係を保とうとしたのでは、などと言われましたが、まったく事実ではありません。美代子というヤクザの女親分が『お前らの口をウチが預かっているんや』と、恩着せがましく言い立て、血の繋がりのない人間を恐怖と懐柔で支配して、声を上げさせて来なかった……。それだけのことで、黒幕などいなかったのです」
■「ケーキ」と「おかき」
その一角を占めていた正則も、決して優遇されていたわけではない。自身の公判では「ナンバー2」どころか、
〈自分は角田家の中で一番下だった〉
と繰り返し、調書でも美代子の表現を借りながら、
〈ピラミッドの頂点が角田美代子、2番目が角田三枝子(注・美代子の義理の妹)、3番目が東頼太郎(内縁の夫)、4番目が角田健太郎(長男)、5番目が角田優太郎(次男)、6番目が角田瑠衣(次男の妻)、7番目が優太郎と瑠衣の間の子2人、8番目がタイガーとラブ(飼われているプードル犬)、9番目が私と仲島(康司、同居人)〉(12年11月6日付)
ペット以下の扱いだったと吐露し、同年11月5日にはこんな供述もしている。
〈角田家の人がごっついエビフライを食べていたので、次は自分らが食べれると喜んでいたら焼き魚でガッカリさせられたり、美代子からは「家族と一緒に飯が食えると思うな」と言われていました。角田家のおやつが「ケーキ」なら、私らは「おかき」と、その差別は徹底されていました〉
■〈かっこ悪いなー俺〉
取り調べの中では、自身が恐れていた暴力団と美代子は無関係だったと、兵庫県警の刑事から仄めかされる。観念したかのように、同じ11月5日の調書では、取調官との一問一答がこう展開されている――。
〈問 なぜ美代子に反抗しないのか。
答 正直、かっこ悪いけど。怖かったんですわ。こんなおばはんに。その人にならんと分からへんことなんですわ。気迫負けというか。一応やくざも語ってんのにかっこ悪いなー俺。
問 美代子の口止めはなかったのか。
答 あったよ。うちのやってることは一切他言すんなよって言ってた。お前は裏切ったら絶対許さんって言われた。力ではかなわんから撃ち殺すって。
問 何故、美代子の元から逃げたりして離れないのか。
答 俺も逃げたかったよ。でも本当にヤクザと繋がっている感じがしとった。(中略)逃げ出したやつを探し出す術を美代子はよく知っとんねん。住民票とか、手紙とか。ホンマあんた何者やと思うくらい。刑事さんには、ヤクザとの関係は無いんじゃないかって言われたし、よく考えたら今まで一度も会わせて貰ったことないけど、本当に嘘なんかな。これが嘘やったら俺、何なん。美代子の嘘にビビってもて。あのおばはんええ加減にせえよ。俺の人生もむちゃくちゃになって。裁判で会ったら文句言うてスリッパ投げたろか〉
投げる相手はもういない。幻影におびえ、使い捨てにされた「暴力装置」は、残りの半生をひたすら塀の中で過ごすしかないのだ。
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