53年ぶり国産機「MRJ」最大のライバルはブラジル

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 下町の零細企業が、財閥系巨大企業に立ち向かう。そんなストーリーの『下町ロケット』が、多くのサラリーマンから共感を得ている。が、航空産業界に目を転じると、小説で“敵役”と思しき三菱重工はおろか、子会社の三菱航空機も下町の工場に過ぎないというのだ。

〈伝説の戦闘機・零戦を開発した三菱が航空市場に新規参入〉

 ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ、新華社通信など世界中のメディアは11月11日、国産初のジェット旅客機「MRJ」(三菱リージョナルジェット)のデビューを大々的に報じた。名古屋空港での初飛行に立ち会った、全国紙の経済部記者も感慨深げだ。

「42年前、国産プロペラ旅客機YS―11が生産中止になって以降、日本企業は部品提供の“下請け” に甘んじていました。今回は初めて機体本体を製造して、組み立てまで行った。つまり、零細部品メーカーが旅客ジェット機を飛ばしたようなものなのです」

 目下、世界の大型ジェット旅客機市場を二分するのは米国のボーイングと、欧州のエアバス。一方、MRJは定員100人以下の小型機だ。航空ジャーナリストがこう指摘する。

「カナダのボンバルディアや、中国の中国商用飛機も中小型機を製造していますが、最大のライバルはブラジルのエンブラエル。世界20カ国以上の航空会社を顧客に抱え、日本でもJALグループや総合商社『鈴与』の関連会杜『フジドリームエアラインズ』が同社のジェット機を購入しています」

 両者の性能に大きな差はない。カタログ価格でMRJが1機約47億円なのに対して、開発中のエンブラエルの同種機はそれより若干割高だというが、

「エンブラエルは、1969年設立の老舗なので、抜群の信用力がある。一方のMRJは、まだまだ無名の存在ですから……」(同)

 53年ぶりに大空を飛んだ国産機。製造目標1000機を達成できるか。

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

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