仏紙連呼「カミカゼ攻撃」標的は「オランド大統領」

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 犯罪行為の“自爆テロ”と特攻隊は本来、まったくの別物。フランスの主要メディアでは、過激派組織「イスラム国」がパリで起こした惨劇を“カミカゼ攻撃”と連呼している。日本人としては、違和感を持たざるを得ないが、ともあれ、実は、この同時多発テ口、オランド大統領を標的に計画されたと見られているのだ。

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 フランス史上、最悪のテロ事件は、11月13日午後9時20分(日本時間14日午前5時20分)に幕を開けた。

 最初の一撃は、オランド大統領が観戦するサッカーの試合会場の『スタッド・ド・フランス』近くで発生した、自爆テロだった。

 現地メディアの記者が解説する。

「フランス代表とドイツ代表との親善試合だったため、8万人の観客がパリ郊外のそのスタジアムに詰めかけていました。同時多発テロを起こした7人のテロリストのうち、スタジアム襲撃のチームは3人。キックオフから16分が経ったころ、チケットを手にしたそのうちの1人が、入口で警備員のボディチェックを受けていました。ところが、高性能爆薬の過酸化アセトンと起爆装置、電池を巻きつけたベストの着用を警備員に見つかってしまったのです」

 一旦は逃げ出したものの、捕まってしまうと観念し、起爆装置のスイッチを入れたのである。

「そのとき、通行人の1人が巻き添えになっています。この1人目のテロリストがシリア難民を装って、ギリシア経由で入国したと見られている。計画の失敗を悟った2人目は、その5分後、犠牲者を出すことなく、自爆している。のちに、エジプト人であったことが判明しましたが、救急搬送される救急車のなかで息を引き取りました」(同)

 一方、VIP席でサッカー観戦中だったオランド大統領は、SPからテロによる爆発の可能性を告げられ、午後9時半頃、警察のヘリコプターで、内務省に緊急避難したという。

「残る3人目のテロリストは息を潜めて隠れていたものの、ハーフタイム中の9時53分、スタジアムの向かいにあるマクドナルドの前で、2人目と同じく単独で自爆した。警察は、パニックを避けるため、観客には試合終了までテロの発生を伏せていました」(同)

 ちなみに、試合はフランスが2対0で勝利を収めた。

■危険な状態

 自爆した3人のテロリストは、コンサートホールやカフェを襲撃した方のチームとは違い、ボディチェックをすり抜けるため、機関銃AK47を携行していなかった。

 現地特派員も言う。

「それゆえ、被害者は1人で済んだとも言えるのですが、もし、サッカースタジアムに入り込まれていたら、オランド大統領は非常に危険な状態に置かれました。スポーツ担当大臣らとともに試合を観ていたVIP席は、メインスタンドの3階でした。そこは、他の観客席とは入口が違うとはいっても、壁で仕切られているわけではなく、近くの一般席からオランド大統領のそばに行くことは不可能ではなかったのです」

 むろん、接近されて自爆テロを起こされたら、無傷ではいられなかった。

 それにしても、シャルリー・エブド襲撃事件に続き、なぜ、フランスばかり狙われるのか。

 作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏によれば、

「フランスは個人主義の国なので、精神的に脆い面があります。過激なテロを起こされると、わざわざよその国の民主化に手を尽くす必要はあるのかなどと諦めの気持ちになってしまう。IS(イスラム国)は、西側諸国の統一した動きに楔を打ち込むべく、あえて弱さを抱えるフランスを狙ったというわけです。つまり、今後のフランスの出方次第では、再び、ISのターゲットになってしまうかもしれません」

 さらなるテロを招く、負のスパイラルに陥っていくのか。

「特集 7人のテロリストで死傷者480人 自爆の爆薬は『魔王の母』 パリを硝煙の都に変えた『イスラム国』に次がある!」より

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

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