時ならぬ「鳩山一郎」騒動に揺れる南房総「館山市」

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“友愛”を唱えた政治家ゆかりの土地が、街を揺るがす騒動の舞台となった。

 千葉県・南房総の館山市議会では、今月9日に「鳩山荘」を当面は売却しないという市の方針が示された。

「鳩山荘」とは、自民党初代総裁を務め、日ソ国交回復に尽力した鳩山一郎元首相が、昭和初期に建てた別荘跡地にある旅館だ。鳩山家は1957年に土地を市に寄贈。建物は新築され国民宿舎として蘇り、15年前に民間へ賃貸する形で「鳩山荘 松庵」としてリニューアルした。が、所有者である市は、今年6月に一般競争入札による借家権付きの売却を発表。これに借主のホテル運営会社が難色を示したため、賃貸契約が切れたままの営業が続いている。

 市側の言い分はこうだ。

「昨秋の台風で建物が破損したので工費を見積もったところ、約4000万円かかることが分かりました。今後の維持費などを考慮すると一般競争入札にして手放すのが適切と判断したのですが、当面は売却を見送り、借主と協議を続けます」

 で、鳩山荘の運営会社・LANIリゾーツの鈴木健一郎社長(67)はこんな意見。

「昨年の時点で市から随意契約で売却の打診があったのですが、急に白紙となりました。一般競争入札では、弊社が改装費に2億円を投じてきた取り組みが反映されず納得できません。運営に携わることになったのも、祖父が旅館業の傍ら地元の村長でもあり、鳩山家に別荘の管理を任されていたご縁があってこそ。一郎先生による“友愛”の書は、今も当館に飾ってございます」

 市から借り受ける際には、鈴木社長が鳩山家へ挨拶に出向いたと振り返る。

「鳩山安子さんにも“鈴木さんの末裔なら”と喜んで頂いていたのですが……」

 一方の市側も、鳩山邦夫元総務相から、売却の了承を得たと主張する。

「市長から財政が厳しいので売却する旨の説明を受けたのは事実ですが、私共は土地を寄贈した以上、口を出す立場になく困惑しております」(鳩山邦夫事務所)

 一郎氏から数えれば、孫の世代に勃発した騒動の行方は如何に――。

週刊新潮 2015年11月19日号掲載

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