[マンション偽装]「管理組合」なら入手可能な杭打ちデータの取り寄せ手順
支持層が浅いからといって安心できるわけではなく、深いからアウトというわけでもない。要は、地盤に合った設計・施工がなされているかどうか、である。
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この機会である。
マンション所有者は、購入時に取っておいた資料があれば確認してみてほしい。
販売パンフレットには、支持層の深さ、杭の長さなどが記されていることもある。また、第三者機関による「住宅性能評価書」が付いている場合は、そこに杭長、さらには杭打ちの工法が明記されているはずだ。
「横浜もそうでしたが、“現場杭”ではなく、工場から出荷する“既成杭”でしたら注意が必要です」
と、建築家の碓井民朗氏が警鐘を鳴らす。
「前者は、現地で支持層を1メートル以上掘り、そこに鉄筋の網籠を入れ、コンクリートを流し込む。もし、支持層が事前調査の数値より深かったとしても、掘り進めればいいだけです。一方、後者の場合、あらかじめ工場で製作した杭を使うので、支持層が深いと杭を発注し直さなければならない。その分、工期が延びてしまうのでデータ改竄が起きやすくなるといえます」
管理組合は、より詳しい「竣工図書」という書類を保管しているはずだ。杭の本数や長さは勿論、柱状図によって現場の正確な支持層深度を確認できる。
■鉛直磁気探査
さて、われらがマンションの杭は、実際のところ支持層に届いているのかいないのか。
一番手っ取り早いのは、既に埋まっている杭の長さを、定規をあてるかのごとく実測することだ。
いわゆる「ボーリング調査」である。
「地中にある杭の長さを測るには“鉛直磁気探査”という手法があります」
とボーリング調査会社の技術者が解説する。
「杭の横に穴を掘り、電磁石を垂らして杭の有無を調べるのです。鉄杭はもちろん、コンクリート杭の鉄筋にも反応します。横浜のケースでいえば、杭が地中16メートルまで打ち込んであるはずなのに、14メートル地点で反応が消えれば“2メートル誤魔化している”とわかる。また、“ボアホール・レーダー”という地中レーダーを用いる方法もあります」
ただし、この調査、1カ所調べるのにつき50万円ほど掛かる。今回の『パークシティLaLa横浜』のような大規模マンションでは500万円以上掛かることもあるという。
そして、この調査の致命的欠陥は「全ての杭を調べることはできない」ことだ。
どういうことか。
「実際に打たれた杭の横に穴を掘るわけですから、建物の輪郭部分に打たれた杭しか調査できません。つまり建物内部の杭は調査不可能。また、輪郭部分にしても、隣の建物との間隔が狭く、建屋を建てるだけの作業スペースが確保できない場合は、やはり調査不能です。住宅が密集する都心部では調査できないことが多々ある」(同)
完全にお手上げか――と、そこで威力を発揮するのが、杭打ち作業時の生データだ。
先頃データ偽装が判明した北海道の公共施設での2本の杭打ち作業時の電流計データを比較すると、2つの波形が全く同じ形で、コピーペーストしたことは、素人でも一目瞭然だ。つまり、電流計データのような何やら難しそうな資料であっても、素人が偽装を見破れることもあるのだ。必ずしも「偽装イコール杭未到達」ではないものの、杭が支持層に到達していれば偽装する必要はないわけで、「限りなくクロに近い」証拠といえる。つまり、何百万円もの大枚をはたいてボーリング調査をするより、管理組合がやるべきことは他にある。
澁澤建築・診断事務所所長の澁澤徹氏によると、
「生データはゼネコンや行政が保管しているのですが、彼らがそれを公開することはまずない」
とのことだが、こういう時節柄だ。管理組合はゼネコンや行政に対し情報公開を強く求めるべきである。
もっとも、
「そもそも何も問題がないマンションを調べる必要はあるのでしょうか」
と、まちづくり計画研究所所長の渡辺実氏は疑問を投げかける。
「問題が見つかっても、今回のように補償してくれるのは稀で、通常は訴訟になり、時間と労力を費やすことになる。よほど住むに堪えない場合を除いて、パンドラの箱は開けない方がいいのではないでしょうか」
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