[マンション偽装]問題発覚の暁に「施工業者」にどこまで要求できるか?
細菌学を修めた結果、極度の潔癖症となった森鴎外は、なま水は飲まず、果物は煮て食べた。そんな横顔が『文人悪食』(嵐山光三郎)に紹介されている。食べ物ならそうやって“自衛策”も取れようが、マンションとなるとなかなかこうは行かない。では、問題発覚の暁には、施工業者にどこまで要求できるのか。
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「欠陥住宅全国ネット」幹事の河合敏男弁護士が言う。
「欠陥マンション問題ではまず、訴訟提起の段階で住民の合意形成が難しい。また、販売会社の従業員や関係者が一定数、当該マンションの所有者になっているケースが多く、さまざまな“妨害行動”を起こすのも障壁となる。そのうえ訴訟結果にかかわらず、建て替えの場合は、『区分所有者の5分の4』および『議決権の5分の4』の決議が必要となります」
これに加えて、立証の困難さもつきまとうし、仮に構造に欠陥があると証明できても、「取り壊し・建て替え」判決は滅多に出ないのだという。
「民法にはごく簡単に言って、『補償で対応できるものは建て替え不要』と明記されている。したがって、裁判官は取り壊し・建て替えを命じるのを躊躇してきた歴史があります」(同)
もっとも、そういった判決が出ないわけではない。河合氏は、かのヒューザーが分譲した物件(全37戸)で原告側代理人を務めた時のことをこう振り返る。
「一審は確認検査機関などに約14億円を払うよう命じた。でも控訴され、結果的に和解勧告を受け入れたのです」
住民側はいわゆる解決金として1戸あたり2000万円を受け取ることになったが、これは購入価格の半分にさえ満たない。そればかりか、欠陥発覚から裁判終結まで7年余もの時間を経ていたのだ。
■揉めているうちに…
一方で、訴訟になることなく業者が購入代金の返還などに応じた例もある。とはいうものの、時間がかかるのは同じようで、
「昨年、住友不動産が販売した横浜の物件で施工ミスが判明。買い取りや慰謝料100万円の支払い提案があった。それにしても、竣工から10年以上が経過しているのです」(「榊マンション市場研究所」主宰の榊淳司氏)
最後に、澁澤建築・診断事務所所長の澁澤氏がこう言い切る。
「販売元が条件のよい額で買い取ると言っているなら、成就するかどうかわからない建て替えを待つよりも、売って引っ越した方がいいでしょう」
なかには「子供の学校があって……」とこだわる人も少なくないが、
「揉めているうちに就職している可能性もある」(同)
偽装は許さじと潔癖に徹しても残るのは徒労なのだ。
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