血圧が下がって美容にもいい1日15分の「血管マッサージ」――明田昌三(医学博士・榊原温泉病院名誉院長)

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■押さずにずらす

 血管には、血管拡張神経と血管収縮神経からなる自律神経が、網の目のように分布しています。温めると拡張し、冷やすと縮む血管は、刺激を受けると拡張を促されて血流が良くなります。腕の皮膚を強く掻くとその箇所が赤くなりますが、これは出血ではなく、小動脈や毛細血管が物理的な力によって拡張した証拠です。加えて血管が刺激されると、筋肉に入り込んでいる毛細血管の中からNO(一酸化窒素)が発生します。このNOにも血管を緩める効果があるのです。

 血圧とは、全体の血液量と心臓が1回に拍出する血液量、そして血管の抵抗性によって決まります。動脈の血流が良くなると、血管壁に付着する余分なコレステロールや糖が剥がれやすくなり、それを「マクロファージ」(大喰細胞)が食べて処理してくれます。血流のおかげで老廃物も取り除かれて抵抗が減少し、血管が弾力性を帯びて若返るため、高血圧には非常に効果的なのです。

 同時に、老廃物の塊であるシミなども、血管を刺激すると消えることがあります。実際に私も右頬にシミがありましたが、刺激を与え続け、新鮮な血液を流すことで除去できました。マッサージを考案された妹尾先生もまた、07年に92歳で亡くなるまでシミひとつなく、肌つやも非常に良かったのを覚えています。

 血管に関わる病気はおしなべて改善し、おまけに肌もみずみずしくなるというわけです。

 では、具体的にやり方をご紹介していきましょう。まもなく訪れる冬の寒気で血管は収縮し、血圧が高まる要素が増えます。マッサージの効果が出るには少なくとも1カ月以上の継続が必要ですが、これから始めれば、心配せずに冬を迎えられます。

 健康を保つ血流改善には、1日15分ほどのマッサージで十分です。時間や場所は問いません。忙しければ5分のマッサージを3回に分けても構いませんし、通勤中の電車で吊り革を持ちながらでも可能です。

 唯一の「コツ」は、骨と筋肉とをずらすように行うこと。皮膚の外側から、普段は刺激を受けない箇所をマッサージし、筋肉の深部にある中・小・細動脈を拡張させるわけです。高血圧の人はもちろん、特別具合の悪い箇所がない人でも、さしあたり四肢から始めるのが適当でしょう。

 まずは腕です。前腕、二の腕に手のひらをぴたりとくっつけ、そのまま相当な力を入れて前後左右に動かします(図1)。決して「押す」のではなく、ちょうどタオルを絞りこむようにギュッとねじって、腕の骨の周りについている筋肉をずらすようなイメージで行ってください。また上下に動かす時にも、筋肉を骨からずらすような感覚で。その調子で手首まで進めていきましょう。手のひらをグリグリと押し込んだり、両掌を組んで強めにこすり合せるのも効果的です。

 手の指に移ります。爪の両端を親指と人差し指でつまんで強めに揉み込みます(図2)。そして指先から根元へ動かし、さらに指を片方の手で包んでぐるりと回転させながら揉みましょう。

 足の指も同じです。一本ずつ手指で挟んで揉み込み、付け根までずらしていきます。手足の指は末端にあるため、普段はなかなか血液が行き届きません。特に冷え症やむくみに悩む人は、入念に揉むことで効果が期待できます。足の甲には足背動脈が流れているので、足指に向かって押し出すようにします。

 とりわけ下半身は、筋肉を動かすことで血流が促進されるので、運動不足の人はまず脚から試すといいでしょう。太腿やふくらはぎは、腕と同じように揉んでもよいですが、筋肉をずらすイメージで、左右にねじるようにマッサージするのがベターです(図3)。

 脚の付け根の鼠蹊部には、大腿動脈が流れています。大動脈へのマッサージは、例えれば大きな河川の上流に手を加えるようなもので、全身の血流に影響を与えます。両手の指でグッグッと強く押していきましょう。

 腋にもまた、腋窩(えきか)動脈という中動脈が流れています。ここを刺激するには、腋の下を手のひらでつかむようにして揉みます。

 こうした刺激を、いずれも1カ所につき1分間で30回ほど、毎日続けていけばよいのです。

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