無報酬だと開き直る「森元総理」は百害あって老害の人

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 蜃気楼のように幻であってほしいと願いたくなるほど、読むに堪(た)えない繰り言記事だった――。10月16日、初秋の冷たい雨が東京を襲った晩。スポーツ記者たちの間では、その日の天候に似て、「湿った」言い分が載ったある記事が話題になっていた。毎日新聞の夕刊の2面に、東京五輪組織委員会会長にして、「シンキロウ」の異名を誇る森喜朗元総理(78)のインタビューが大々的に掲載されたのである。

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無報酬だと開き直っている森喜朗元総理

〈森喜朗元首相の胸中やいかに〉

 こう題された問題のインタビュー記事では、当然、新国立競技場やエンブレムを巡る「東京五輪ゴタゴタ」が話題の中心となったが、森氏はこう言い放ったのだった。

〈この件(エンブレム問題)に関しては(武藤敏郎)事務総長らが報酬の一部を自主返納する処分を決めました。私は無報酬だから、返納しようがない。女房からもらった小遣いを差し出すんですか〉

 あたかも、無報酬で献身的に頑張っているこの私に文句をつけるなんてけしからん、と言わんばかりに開き直ってみせたわけである。他にも、

〈責任とれ、責任とれ、辞めろ、辞めろと責められるが、辞めて済むなら辞めますよ〉

〈組織をまとめあげるまでが私の役割だと思っている。あと3年はちゃんとやるよ〉

 こう述べ、要は会長を辞するつもりなどないと、高らかに宣言したのだ。

「組織委員会の会長というのは、お飾りの名誉職ではなく実務職であり、極めて責任の重い立場です。無報酬だから……と、自慢げに語ること自体がおかしい」

 と、スポーツ評論家の玉木正之氏は一蹴する。

「彼はインタビューの中で『私は、応援団だ』とも言っていますが、五輪を成功に導く一番の責任者である会長が、応援団であるはずがない。これでは、まるで他人事です。自分の立場が分かっておらず、改めて、森さんが会長ではダメだとの思いを強くしました」

■「不遜さが潜んでいる」

 そもそも、先に紹介したように森氏は、

〈私は無報酬〉

 と、ボランティアなのかと誤解してしまいそうな物言いをしているが、一方で、件(くだん)のインタビューではこうも“告白”している。

〈私は日当をプールしていて、盆や暮れなどに(組織委員会の)宴会を開いている〉

 実際、組織委員会に確認すると、

「(森氏に)業務を執行した理事として日当1万円を支給しております」

 やはり、森氏はしっかりと日当をもらっていたのである。無論、その日当はあくまで労働の対価であり、つまり相応の働きを前提にしたものであるはずだ。それを彼が宴会費用に充てているからといって、同情に値するものではない。奢(おご)ってくれるからといって、ダメ上司はダメ上司。問題とすべきは、森氏が職責を全(まっと)うできているか否かの一点なのである。

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏が呆れる。

「『辞めて済むなら辞めます』との発言には、スポーツ界のドンである自分を誰もクビになどできはしない、という不遜さが潜んでいるように感じます。こういう心持ちだから、森さんは自己批判ができないのでしょうね。会長の座に留まるべきではありません」

 老害はただ消え去るのみ。

「ワイド特集 唇寒し秋の風」より

週刊新潮 2015年10月29日号掲載

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