秒読み「郵政上場」“不穏なる相場”の読み方
あと2週間ほどとなった、11月4日の郵政3社上場。10月19日には、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険株の売出価格が決まった。
「ブックビルディングでは予想を超える需要があったようで、事前に提示された仮条件の上限価格である、ゆうちょ銀行が1株1450円、かんぽ生命保険が1株2200円となりました」(経済部記者)
国内売り出し分の9割が、個人投資家向けとされる郵政株だが、ブックビルディングで運よく抽選に当たった投資家は初心者が多いのか、経験者が多いのか。
「確かに郵政3社の株を1単元ずつ買っても50万円ほどですから、初心者も手が出しやすい価格ではあります。が、今年前半のように市場が右肩上がりではなく、初心者は先行きの見通しがつけにくいことから、今回のIPO(新規公開株)を見送ったようです」
と見るのは、株式評論家の植木靖男氏。投資家は、購入資金を今保有する株を売って手当てするのか、手持ちの現金を使うのかの二択になるのだが、もし前者が多ければ売りが増え、日経平均株価を下げる可能性が出てくる。
「今後株価が上がると読めば、手持ちの資金を使うでしょう。証券会社の個人口座には、約10兆円の資金が眠っていると言われていますから。でも下がると見ると、株を売って資金を作るでしょう」(同)
■今は“割安”なのか
では、今後の相場をどう読むべきなのか。
「8月20日までは2万円だった日経平均が、9月上旬には1万8000円を割り込むところまで下がりました。これはいわば、山の頂上から一気に駆け降りたようなもので、今は息を整えているといった状況です。問題はここから再び上がるのか、下がるのか。その意味では、10月15日から2日連続で上がったのに、週明けの19日に160円下げたことが痛い」(同)
経済ジャーナリストの田部正博氏は、
「郵政上場前の換金売りが始まり、10月26日の週の株価は1万8000円を割り込む場面もあるでしょう」
と読む。不安定な相場はまだ続く、というわけだが、
「3月決算企業の中間決算が、同時期に出てきます。その数字がよく、業績予想を上方修正する企業が増えれば、株価を押し上げる効果が出てくる。逆に下げ続けたとしても、下値は1万7000円台半ばまでだと思います」(同)
大型上場を前に、読みの難しい不穏な相場だが、市場が期待もし、織り込みつつあるのが日銀による追加金融緩和、いわゆる“黒田バズーカ”第3弾だ。
「黒田東彦・日銀総裁は、10月19日の全国支店長会議で、量的・質的緩和は“必要な時点まで継続する”、さらに“リスク要因を点検し、必要な調整を行う”と発言しました。10月30日に行われる日銀金融政策決定会合での追加緩和決定に、含みを持たせたものと見られています」(先の記者)
もし第3弾が発射されれば市場は歓迎し、日経平均は上がるだろう。ならば今は割安感のある相場、と見ることもできる。
「仮にバズーカが見送られて、10月末段階で株価が下がったとしても、郵政上場時には、利回りを狙った個人投資家の買いが入る。その後は郵政株のTOPIX(東証株価指数)組み入れにともなう機関投資家の買いも入るでしょうから、下値不安が払拭されれば、年内に日経平均2万円もありうると思います」(田部氏)
今の1万8000円前後が買い時、2万円になったところで売り、ということだ。一方、植木氏は、
「今はとりあえず見送った方がいい」
と慎重な見方を示す。
「有効な経済対策と海外株の上昇が重なれば、日経平均も反発するでしょうが、それでも年内に2万円には届かないかもしれず、割安とは言い難い。今は様子見がいいと思います」
攻めるか、守るか。