右翼街宣車が「鳩山由紀夫」元総理を包囲した神田小川町の攻防戦
「神田祭」は「山王祭」、「深川祭」と並ぶ、「江戸三大祭」の一つ。例年、半被(はっぴ)を纏った男女が神輿を担いで練り歩く千代田区・神田小川町の交差点で“事件”は起こった。10月4日の夕方、鳩山由紀夫元総理(68)が乗った高級車が、複数の右翼団体の街宣車に包囲されたのだ。警察と右翼が繰り広げた攻防戦の顛末とは。
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職業的謝罪家
「夕方の4時半頃かな、騒々しいと思って外に出たら、交差点の真ん中で黒塗りのフーガが6台ほどのワンボックスやRVタイプの街宣車に取り囲まれていてね。聞いたところでは、追走していたSPの車も別の街宣車によって止められていたそうです。その間も大きなスピーカーからは大音量の軍歌が鳴り響くし、そこにダミ声でがなり立てるもんだから、何を言ってるのか分かりゃしない。でも、時折り“ハトヤマ~!”と言うのは何とか聞き取れました」
と、振り返るのは小川町交差点近くの商店主だ。
「近づいて行くと、窓ガラス越しにチラッと由紀夫さんの顔が見えた。それで、総理大臣をやったお兄さんの方だと分かったんです」
近くの飲食店に勤務する女性は興奮気味。
「街宣車から降りて来た屈強な男性が、鳩山さんが座っている後部座席のドアを開けると、中に向かって何やら叫び始めたんです。するとすぐにスーツ姿の警察官が覆面パトカーから飛び出して、男性を引き離しました。その聞もパトカーが続々到着して、5~6台が拡声器で“車を動かしなさい!”、“速やかに退去しなさい!”と怒声混じりに呼びかけていましたね」
歩道には野次馬が集まり、車道は完全にストップした。渋滞に苛立つ一般車は右翼団体に抗議をするようにクラクションを鳴らし続け、周囲はしばらく騒然とした空気に包まれたという。もちろん、その間も街宣車は軍歌を垂れ流し、加えて、
「日本の恥さらし!」
「売国奴!」
「日本から出て行け!」
などと、元総理を悪しざまに罵り続けたのである。
■「謝罪は当たり前」
思わぬ豆鉄砲を食らった鳩山氏は、この日、13時30分から明治大学の研究施設で開かれたシンポジウムに出席していた。明大関係者によると、
「テーマは『日中友愛外交の道を探る』で、鳩山氏はゲストとして招かれていました。15分ほどの講演で、“13年に南京の大虐殺記念館に行ったら国賊と言われた”とか、“南京大虐殺は30万人と言われていますが、たとえ1人でも中国の民間人を殺(あや)めたら謝罪するのは当たり前”などと、悪びれる様子もなく滔々と話をしてました」
その間にも“獲物”のニオイを嗅ぎつけた右翼の街宣車は続々と集結していた。公安関係者によると、6団体の50人が25台の街宣車に分乗していたという。さて、攻防戦の行方は、
「街宣車は20分くらいで走り去りました。その際、“警察諸君はどうして売国奴の肩を持つのか!”と捨て台詞を残していきましたけど……」(先の商店主)
時間にして約30分。が、鳩山氏にはその何倍も長く感じられたことだろう。