誰が見ても犯罪なのに「ドクター小保方」の刑事告訴を見送る理研の臭い所
まばゆいばかりの純白の割烹着。それは灰色に変色しはじめたかと思うと、瞬く間に濁色の度合いを深め、ついには真っ黒に染まってしまった。9月24日付の英科学誌「ネイチャー」に、STAP細胞の存在を否定し、その正体はES細胞だったとする2つの論文が掲載された。これで世紀の大発見は捏造だったことが改めて立証され、世界に発信された形だ。となれば、捏造の主「ドクター小保方晴子(32)」に犯罪の疑いが出てくるが、何故か理研は早々に刑事告訴を見送った。
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「STAP細胞はありま~す」と言った会見のときの小保方晴子
今回、「ネイチャー」に掲載されたのは、米ハーバード大や中国、イスラエルなどの7つのチームによる研究報告。彼らは計133回、STAP細胞の作製を試みたが、いずれも再現できなかったという。同時に理研も「STAP細胞はES細胞由来だった」とする、試料の全遺伝情報の解析結果を報告した。これで“夢の細胞”の不存在が国際的に確定したわけだ。科学ジャーナリストの緑慎也氏が語る。
「科学的な検証は済みましたから、今後は、“では、誰が製作過程でES細胞を混入したのか”という司法レベルの検証に進まなければいけません。理研が刑事告訴を行う必要がある。当の小保方さんはこの間、沈黙を守っています。今回の結果をどう受け止めているのか、きちんと説明すべきです」
渦中の小保方氏は昨年4月、「STAP細胞はありま~す」と会見を開いて以降、体調不良で入院。そのまま表舞台から姿を消し、雲隠れ状態が続いている。
■ES細胞の発見場所は!?
ちなみにSTAP細胞作製時に混入されたES細胞は、小保方氏の共同研究者で、当時、理研に在籍していた若山照彦・山梨大学教授の研究室で作られたものであることが判明している。
「解析の結果、若山教授のES細胞と遺伝子の傷まで一致したのです」
と明かすのは理研関係者。
「しかも、昨年4月、理研の小保方研究室のフリーザーから、若山研究室で紛失し、探していた、ES細胞入りのチューブ80本が発見されたのです。これについて彼女は“盗んでいない。知らない”と言うのみでした」
誰の目にも犯罪行為が明らかなのに、理研は今年3月、刑事告訴しない方針を公表した。それは今般の「ネイチャー」の動きを受けても変わらないという。理研にその理由を尋ねると、
「調査委員会では、全ての関係者からの聞き取り調査や、保全していたメール、試料の分析など、あらゆる調査を行ったが、刑事告訴の要件となる『行為者の特定』や『故意の立証』たり得る発言等が得られなかった。過失による混入の可能性もあり、刑事告訴は困難との結論に至りました」
これに関し先の緑氏は、
「ES細胞の混入が過失と言うなら、奇跡としか言いようがない。科学的かつ現実的にあり得ません」
一連の騒動により、理研は検証実験などで総額約8400万円もの経費を費やした。これとは別に、小保方氏には昨年12月の退職までの2年間で4600万円の研究費を支給している。むろん原資の大半は税金だ。しかも神戸の理研CDBの副センター長で、STAP細胞の共同研究者だった笹井芳樹氏が自ら命を絶つ、最悪の悲劇も招いた。これだけ大きな代償を払いながら、理研が小保方氏に返還を求めたのは、論文投稿費用の約60万円だけだ。医療ガバナンスに詳しい上昌広・東大医科学研究所特任教授が慨嘆する。
「理研は偽計業務妨害やES細胞の窃盗などで警察に刑事告訴すべきです。物的証拠が乏しいとしていますが、本来、それを判断するのは警察ですよ。告訴しないのは、司直の捜査が入って、これ以上、理研のイメージダウンが拡大するのを避けたいから。早く幕引きしたいだけです」
こうした中、今年に入り、新たな動きも起こっていた。理研の元上級研究員で、理学博士の石川智久氏が、被疑者不詳でES細胞の窃盗を訴える刑事告発状を兵庫県警に提出。5月に入って、正式に受理されたのである。
かつて韓国ではES細胞の論文捏造で、黄禹錫(ファンウソク)・元ソウル大教授が、詐欺等で刑事訴追され、有罪判決を受けている。日本の科学界に浄化機能はありやなしや。
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