【中国「スパイ容疑」で邦人拘束】「協力者」に払われる調活費とトホホな「中国情報」の果実
今回、拘束された日本人のうちの1人は中国の軍事施設の写真を撮影していたとされるが、果たして、その写真にはいかほどの価値があったのか。また、“任務”が無事に成功していたら、いかほどの対価が支払われていたのだろうか。
「公安調査庁(通称「公調」)が中国に送り込んだ協力者が、軍事施設を撮影して拘束されたというのが本当だとすれば、あまりにも稚拙。なぜなら、軍事施設を周囲から撮影した写真には情報価値などないからです。そんなものに価値を見出していたら、世界の物笑いの種になってしまう」
そう語るのは、陸上自衛隊の元幹部である。
「“鳥の目、虫の目”と言われる概念がある。アメリカがやろうとしているのは、鳥の目である偵察衛星で宇宙から軍事施設を撮影して経年変化を観察すること。そして、そこから何か情報を得た場合に、虫の目として地上から偵察するのです。それも、単に外観を撮影するのではなく、どこにミサイルがあるかなど、もっと具体的な目的を持ってです」
今回、協力者が“価値のない”写真を撮影しに行って拘束されたのだとしたら情けないが、ジャーナリストの野村旗守(はたる)氏は、
「謝礼の額はおそらく数万円程度でしょう」
と言うから、割に合わない“任務”という他ない。
もっとも、公調がケチなのかというと、決してそんなことはない。何しろ公調は、「調査活動費」という、領収書のいらない金をふんだんに使うことができるのだ。ちなみに公調の2015年度の予算額は約140億円。そのうち16億円余りが調査活動費である。
「公調は警察と違って強制力をもって相手を調べることができないため、金を使って協力者を確保し、監視対象の情報を抜き取る、という手法になるのです」
と、全国紙公安担当記者。
「もちろん、支払う金額は相手によって違う。例えば、北朝鮮の金正日にパイプがあった文明子というジャーナリストは、アメリカのCIAと公調両方のエージェントと言われていた。このクラスになるとおそらく年間数百万円を支払っていたと思います」
公安事情に詳しいジャーナリストも言う。
「以前、公調の調査官に、共産党中枢の協力者ならどれくらいの金を出せるかと聞いたら、“協力金だけで不自由なく暮らせる額”と言っていました」
公調では協力者をその価値によってランク付けして登録しているという。今回、拘束された協力者はどの程度のランクだったのだろう。