ようやく巨人監督の本命候補に格上げされた「江川卓」の雌伏28年
耳の大きい人は出世するとよく言うが、ようやくこの人にもそんな俗説が現実味を帯びてきたということか。野球評論家の江川卓氏(60)が、次期巨人監督の本命と報じられた。1987年の引退から28年。白羽の矢が立った背景は一体――。
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その日の日刊スポーツ1面に驚かされた球界関係者は少なくなかった。
〈原監督 V逸なら解任も 後任候補には江川氏らの名〉
9月26日、首位ヤクルトとの「天王山」2連戦の初日のタイミングで、そんな見出しが躍ったのである。
「ニッカンの記事、というのがミソなんです」
と、別のスポーツ紙の野球担当デスクが言う。
「あそこにはスポーツ報知出身で、原さんと昵懇の記者がいる。そこが『解任』と書いたということは確度は高い。原さん自身、よほど進退窮まっているのでしょう」
リーグ制覇7回、3度の日本一を達成しても、原氏の評価はけして高くない。OBの広岡達朗氏も言う。
「未だに他球団から取ってきた選手ばかり活躍している。教育をしてこなかった証拠です。勝ってると言っても、金の力による勝利。12年も監督をやったのだから、もう潮時でしょう」
では、一方の「江川監督」の実現度はどうなのか。
■松井監督がベストだが…
遡れば90年代頭には、既に監督候補と報じられていた江川氏だが、その度、名が出ては消えた過去がある。
「それは、主筆のナベツネさんが『江川監督』を絶対に許さなかったからです」
と、読売グループ関係者。
「主筆は『空白の一日』の後処理をさせられた経験から、彼を快く思っていなかった上に、以前、巨人の助監督に招こうとした際に金の話ばかりされたことから、“金権野郎!”とボロクソに言うようになりました」
加えて、主筆の頭にあったのは「借金問題」。江川氏が不動産や株の取引に失敗し、多額の負債を抱えたのは知られた話だが、
「主筆はどこで調べたのか、アチコチに“江川君の借金は100億以上”“そんな男に監督は任せられない”と触れ回ってきました。その額が事実かどうかはともかく、ナベツネさんの目の黒いうちは、『江川監督』はありえないはずでした」(同)
ところが、ここに来て、その名がにわかに大本命として浮上したワケだ。
「読売も、背に腹は代えられぬ、ということですよ」
と、その“事情”を述べるのは、先のデスク。
「読売の部数は減り続け、900万部を切るかもしれない。渡辺さんは巨人人気の復活を、部数回復の起爆剤にしようとしているのです」
それには、国民栄誉賞受賞の松井(秀喜)監督がベストだというが、
「彼はまだ若いし、ヤンキースの役職にも就いたので、監督にはまだ時間がかかる。それまでの間、客を集められるOBとなると、これが江川しかいないのです。渡辺さんは、とにかく人気第一の人ですし、今は江川の借金も数億レベルに圧縮されたと話している。わだかまりを捨て、『江川監督』を呑んでも、全く不思議はありません」(同)
渡辺主筆に江川氏との関係を尋ねると、読売新聞グループ本社名で「当社は原監督の采配に期待しています」。この煙に巻いた回答こそが、逆にストーブリーグの“きな臭さ”を暗示しているようでならないのである。