覚悟の「川島なお美」の心の支えは「純金延べ棒」と「インスリン」
やせ衰えても最後まで「女優」であることにこだわった女、それが川島なお美(享年54)である。9月24日、胆管がんで亡くなるまで、抗がん剤治療を拒み、それでも舞台に立ち続けようとした彼女が、最後にすがった2つの治療法とは。
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「目を見開いて“ハアッ”と魂を吐き出すような感じで、本当に力強かったです」
川島が亡くなった2日後、夫の鎧塚俊彦氏(49)は、彼女の最期の様子をそう明かした。それにしても、激やせした姿が報じられてから、わずか2週間あまりのあっけない死である。
「がん患者は末期になると増殖したがん細胞に栄養を取られ、『悪液質』という衰弱した状態になります。激やせもそのためです。しかし、抗がん剤を使えば、今度は副作用で舞台に立つことも出来ません。残された時間をどう過ごすかということを考え、亡くなる直前まで舞台に立つことを選んだのでしょう」(東大医学部附属病院の中川恵一准教授)
医師のなかには、がん患者に抗がん剤を使うべきではないと主張する人もいる。川島も以前から抗がん剤には否定的だったが、治癒そのものを諦めていたわけではない。むしろ、化学療法の代わりに選んだのが、野菜ジュースなどのオーガニック食材を試したり、民間療法を探すことだった。
あらゆる治療法を探していた
親交のあった漫画家のさかもと未明氏によると、
「川島さんは手術した後、“体をよくするためにあらゆる情報を仕入れているの。何かいいものがあったら教えてね”と言っていました。あくまで健康のため、という言い方でしたが……」
なかでも彼女がのめり込んだ民間療法は『ごしんじょう療法』というものだ。
これは、純金で出来た2本の延べ棒(ごしんじょう)を患部にあてて擦(こす)るというもの。この療法を実践する『貴峰道』の主宰者・貴田晞照氏が言う。
「体内に蓄積した邪気、科学用語でいえば過剰な電磁気エネルギーを、『ごしんじょう』で見つけ、取り除き、生命エネルギーの場を正しくする治療法です。川島さんが来たのは、がんが見つかった翌月(2013年8月)で、鎧塚さんの紹介でした。以来週1、2回は通われ、治療に来られない時はご自身で所有する『ごしんじょう』で自ら施術していました。亡くなられる直前まで舞台に立てたことの一助にはなったと思います。本当に立派な方でした」
がんの専門家でなくとも首をひねりたくなるような療法だが、川島はこの療法を気に入り、100回以上、施術のために訪れている。また、彼女自身も、大きな『ごしんじょう』(108万円)と、中サイズのもの(64万8000円)を持っていた。藁にもすがる思いだったのだろうか。
■がん細胞を飢えさせる
また、これとは別に彼女が試していたと言われるのが『強化インスリン療法』や『IPT療法』と呼ばれるものだ。
「がんは正常な細胞よりも十数倍の糖分を取り込むという特徴があります。PET検査の腫瘍マーカーではこれを利用して患部を光らせますが、同じ理論を用いたのが強化インスリン療法です。方法はインスリンを投与して一時的に低血糖状態を作り、がん細胞を飢餓状態にする。そこへ抗がん剤とブドウ糖を一緒に点滴するというものです。抗がん剤と言ってもアミグダリン(ビタミンの一種)という天然成分ですから体に負担はありません」(医療ジャーナリスト)
だが、川島と親交があった医療関係者が言うのだ。
「この療法はインスリンの点滴前に8時間近く絶食しなくてはならず、効果も充分に証明されていません。医学界では、やはり民間療法の類に入ります。それでなくとも、がんが進行し食が細くなった彼女の体に合っている療法だったのかどうか……」
一説にはがんが見つかった時点で「余命1年」を宣告されていたという川島なお美。それを超えて生きることが出来たのは、治療法の効果というより、最後まで「舞台に立つ」という執念を捨てなかったからに違いない。