大願成就の安倍総理が「論功行賞を授ける人」「冷飯を食わす人」

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「人間には憎んだり、戦ったり、勝ったり、そういう原始的な感情がどうしても必要なんだ」(三島由紀夫著『永すぎた春』(新潮社刊))。あたかも永田町の人事をめぐる椅子とりゲームを見透かすかのような一節である。

 通常国会が閉会すれば、10月上旬の内閣改造・党役員人事が待つ。まず、安倍総理が論功行賞を授ける人を政治部デスクに聞くと、

「浜田さん(靖一・元防衛相)の名があがっている。彼が衆院で平和安全法制特別委員会の委員長に就いた裏には、総裁選出馬を目指していた野田さん(聖子・前総務会長)の勢いを殺(そ)ごうとする官邸の狙いがあったのです」

 永田町関係者のひとりが後を受ける。

「2人は当選同期で親しい間柄だった。浜田さんは、“総裁選になったら、彼女の推薦人は俺が集めるよ”と話していたほど。野田さんが出馬断念に追い込まれたという結果から、官邸は彼へのポストをエサに両者の関係に楔(くさび)を打ったと見られます」

 さらに浜田氏は、石破茂地方創生相とも近い関係だが、先ごろ立ち上げが発表された「石破派」への参加を目下、見合わせている。

「官邸の意を受けた、石破派分断の行動と指摘する者もいる。もしそうなら、入閣の可能性は高まる」(同)

 逆に、冷飯を食わす人に目を移すと、

「船田元さんが筆頭。安保法案審議に関して、政府与党を窮地に追い込んだA級戦犯です。必要のない憲法審査会を開いたうえ、参考人の専門家から『集団的自衛権の行使は違憲』と断じられ、お粗末ぶりを露呈した。要職就任はもうない」

 次に、中谷元・防衛相も干されそうなひとり。

「中谷さんの不安定な答弁中、総理が苛立ちを隠せず、眉をひそめる場面が何度もありました」(前出デスク)

 もっとも、政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう見る。

「本来なら不適格で外される人間ですが、今後、防衛大臣に大きなテーマはない。詰め腹を切らされたと言われないためにも、交代をためらうかもしれません」

 ひさかたの光のどけき秋の日に静心なく人の散るらん――。人事に気もそぞろの永田町である。

【特集】「『安保法案』7つの疑問」より

週刊新潮 2015年9月24日菊咲月増大号掲載

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