1700人が犠牲になった「ニオス湖の悲劇」とは【地球の履歴書】

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1700人が犠牲になった「ニオス湖の悲劇」

 さらに第八章では「地震の前兆と予知」「玉川毒水」「ニオス湖の悲劇」と続いていく。その過程では、地震の前兆とラドン濃度の異常、田沢湖の人為的な栄枯盛衰、そしてなんとさかなクンが発見したクニマスにまで話題がおよぶ。しかし、そのすべては有機的につながっていて、読者はけっして飽きることはない。

 それにしても最後の話題である「ニオス湖の悲劇」はまったく知らなかった。1986年カメルーンで発生した、きわめて珍しいが反復して発生する自然現象のことだ。この時には1700人もの人が亡くなっている。

 この驚くべき現象は「湖水爆発」というらしい。日、米、仏、カメルーン共同の科学者チームが特殊な装置を設置したので、これからは安心らしい。どんな激烈な現象で、なぜどのように発生するかについては本書を読まれたい。193ページから200ページまでなので、立ち読みでも大丈夫だ。しかし、立ち読みをしたら最後、間違いなくレジに持っていくであろうから、ムダな抵抗だと断言しておこう。

 大河内作品に共通するのは多くの科学者による、長年にわたる研究の積み重ねへのリスペクトだ。本物の知はそこにある。

【書評】「本物の知がここにある」
 評者/成毛眞(なるけ・まこと 書評サイト〈HONZ〉代表)

「波」2015年10月号掲載

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