【安保法案】長い時間がかかる「違憲訴訟」の最終的な結末は?

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 忌憚なく結論から言えば、累々たる棄却判決と税金の無駄遣いということになる。

「国民には請求権があり、誰でも裁判を受けられることが保障されている」

 と、元裁判官で弁護士の井上薫氏が解説する。

「したがって、どんなに荒唐無稽な訴状でも裁判所はいったん受理する。ただ、そういった無理筋の提訴のほとんどは、憲法判断に入る前に『却下』という判決を出す。現行の制度では、用のない判断はしないことになっているから。それでも結果が出るまでに、1カ月ほどかかるでしょう」

 加えて、提訴に必要な費用は印紙代の1万円ほどだから、提訴乱発は必至。法案成立以降に起こされる、あたかも雨後の筍のような違憲訴訟は、短期間で片付きそうにないのだ。

 続いて、集団的自衛権が行使され、自衛隊が派遣された場合に目を転じよう。

「『差し止め訴訟』が全国に拡がるかもしれません。“日本が紛争に巻き込まれる可能性があり、平和のうちに生きる権利を侵害された”などとこじつけるのです」(日本大学法学部の百地章教授)

 この段階では、全てが「却下」とはならない。なぜなら、

「裁判を担当して有名になりたいという裁判官がいますからね。その功名心から、全体の2~3割が審査の対象となるでしょう。原告を呼んで尋問をするようなことになれば、判決が出るまでに1年くらいかかる。それにしても、棄却されるでしょうが」(前出・井上氏)

“目立ちたがり屋”裁判官の例をさかのぼると、2008年4月の名古屋高裁判決に行き当たる。それは、小泉政権下で始まった自衛隊のイラク派遣の違憲性を問うもの。裁判そのものは先の百地教授の解説にあるように、「自衛隊派遣が、原告の平和的生存権を侵害した」として争われたのだが、

「判決はこれを退けました。が、その傍論のなかで、“イラク派遣を違憲”とした。私はこれを“傍論の暴論”と呼んでいますが、こうした裁判官の単なる意見を、原告側は政治的に利用するのです」(百地氏)

 仮に違憲判決が確定すれば、安保法制は失効となるが、

「自衛隊が何らかの行動を起こしたからといって、国民個人の権利が侵害されることはない。だから違憲判決などあり得ません」(同)

 とはいえ、違憲訴訟が量産され、その費用に税金が消える。空疎で不毛な争いが始まるのだ。

【特集】「『安保法案』7つの疑問」より

週刊新潮 2015年9月24日菊咲月増大号掲載

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