北大路欣也 回転寿司にドラクエにGoing my way!
このままではマツケンならぬ“キタキンサンバ”でも踊り出しかねない――。
北大路欣也(72)といえば、時代劇から現代劇、大河はむろん朝ドラでも重厚な役どころをこなす大物俳優だ。だが、テレビCMとなると色合いを異にする。
ソフトバンクの“犬のお父さん”の声はすでに9年目に突入しておなじみだが、当初は意外性が話題となった。昨年からは絶対に行きそうもない回転寿司を美味そうに頬張り、この9月10日からは「ドラゴンクエスト」のゲームキャラクターになりきっている。
巨大な襟の黒コートを羽織り、髪を逆立て眼を見開いて“世界の半分をお前にやろう!”と語る姿は確かに迫力。だが、どこまでやるつもりなのか。誰か止める者はいないのだろうか。
「最近夫婦揃って介護付き有料老人ホームに入って、現場にはそこから通っていると聞きます。だからといって、その費用が高いからCMで稼いでいるわけではないだろうけどね」
と冗談めかすのは映画評論家の白井佳夫氏だ。
「70歳を超えて、父親の血が騒ぎ出したのかもしれませんねえ」
北大路の父はいわずと知れた時代劇スター、市川右太衛門である。
「右太衛門さんの当たり役『旗本退屈男』では、“この眉間に冴える三日月形、天下御免の向こう傷……”が決め台詞でしたが、そんな大仰な役を臆面もなく30本も撮った。当時でもある程度の年になったら避ける役柄です。後年、もう80歳も超えた頃に、日本映画批評家大賞(ゴールデン・グローリー賞)を受賞したときに、ちょっとやって貰えませんかとお願いしたら、目を爛々と輝かせて演じてくれました。その時、客席から見ていたのが欣也さん。彼は父からチャンバラの所作、早稲田で演劇を学んでいるから現代的なところもある。迫力と貫禄に加わった、照れのない演技。東映同期にも見当たらない比類のない存在で、もはや人間国宝ものですよ」(同)
あらゆる路を突き進んでいっていいようである。