保身を優先する上司とどう付き合えばいいのか?精神科医が解説/それ、「人間アレルギー」が原因です(3)
合わない上司とどう付き合うか。それは組織で働く人の永遠のテーマだ。ひとつ間違えると、ひどいダメージを負うこともある。どうすればそこから回復できるのだろうか。
臨床経験27年のベテラン精神科医、岡田尊司さんは、『人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか』(新潮社刊)の中で、こう書いている。
上司との確執が原因で、無気力や絶望感、強い人間不信などの状態に陥っていた邦章さん(仮名)が、少しうつが回復傾向になったときに、上司について振り返った結果は次の通りである。
・良い点
基本は穏やかで、怒鳴ったり感情的になったりすることは滅多にない。
・何とか許容できる点
利己的で、自分だけ楽をして平気。感情の機微に鈍感で、無神経な物言いをする。小心で、用心深く、何よりも保身を優先する。
・どうしても許せない点
自分はろくに仕事をしないのに、部下の仕事には口出しする。
邦章さんは、自分が取り組もうとしたプロジェクトを、上司の手でつぶされてしまっていた。上司が単に楽をしたり、保身を優先したりするだけであれば、やり過ごすこともできた。しかし、自分が心血をそそいで取り組んでいたプロジェクトが、上司の小心さや嫉妬心のために潰されるという事態に及んで、もはや許せないと感じたのだ。会社の発展と保身。最も優先する価値観の決定的な違いが、相手を異物と感じさせ、強い人間アレルギーを引き起こすに至ったのである。
邦章さんはそう振り返る中で、自分がすべてに絶望し、人間不信にさえ陥っていたのは過剰反応であり、上司のせせこましい料簡が許せなかっただけだと気が付いた。そして、妥協できなかったのは自分が自分であるうえで必然的な反応だったと納得できたのである。
彼は、もはやこの上司のもとでは働けないという結論に達し、うまく折り合いがつけられない自分はダメなのではという気持ちからも解放された。自ら異動を願い出て、新天地で仕事をする方向に気持ちを切り替えると、みるみる元気を回復していった。
■どこが許せないのか、切り分けて考える
人間アレルギーは不治の病ではない。段階を踏んで適切に対処していけば治るのだ。
前回みたように、事実と推測を区分けできたら、次のステップに進もう。事実を、直接に害をなす部分と、さほど害のない部分に切り分けて、本当に困る部分は何かを明確にしていくのだ。
上司のことがだんだん嫌になってきているとしよう。人間アレルギーが全般化して、上司のすべてが許せなくなる前に、まず、上司の言動を記録してみてはどうだろうか。それを振り返りながら、どうしても許せない点、なんとか許容できる点、良い点に分けて、分析してみるのだ。自分が何を嫌だと感じているのかがはっきりすれば、対処方法を考えやすくなる。
ただし、人間アレルギーは悪い面ばかりではない、と岡田さんは言う。
「人間アレルギーが、その人本来の生き方が脅かされているがゆえの警告として起きている面もあるんです。その警告に耳を傾け、メッセージを読み解くことができたら、無理して頑張ろうとせず、もっと適した環境やパートナーを探した方がいいと思います」
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