地元が怒っている「逗子マリーナ」の130メートル高層ホテル構想

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 相模湾に面した神奈川県の葉山、逗子、江の島を含む湘南一円は日本の「ヨット発祥の地」。中でも逗子市の「逗子マリーナ」は約半世紀の歴史を誇り、全国のヨットマンは敬意を込めて「聖地」と呼ぶ。そのマリーナに高層ホテルの建設計画が持ち上がり、地元住民は猛反発。あちこちから怒りの声が上がっている。

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富士山が見える逗子マリーナ

 逗子マリーナを運営するのは、湘南地域を中心にヨットハーバーやリゾートマンションなどを経営する「リビエラグループ」だ。

 7月30日付の『神奈川新聞』によると、リビエラグループは2020年の東京五輪のセーリング競技が江の島で開催されることを受けて、6キロ東の逗子マリーナ内に五輪関係者の宿泊先の建設を検討中。それが、高さ130メートルに達する高層ホテルだというのである。

「すでにリビエラが、水面下で県や市の了解を取り付けたフシがあるんです」

 と、地元記者は怪訝な表情。というのも、逗子市では02年に『逗子まちづくり条例』が制定されており、20メートル以上の高層建築は認められていない。市長が特別に許可した場合でも、上限は2割増しの24メートルまでと定められているからだ。

「ところが、今春からリビエラが市長や一部の市議、住民に提示したとされる資料には、高層ホテルの完成予想図が描かれていた。それを知った住民たちは“条例が撤廃される”と疑心暗鬼に陥った。そうした不信が、景観が損われるという危機感と相まって、怒りとなって噴出してきたわけです」

 先の記事の翌日には、黒岩祐治知事が定例会見で「とても良いこと」「県としてできる限りの協力はしていきたい」と発言。怪しい気配を感じた住民たちは、いよいよ怒りのボルテージを上げたのだという。

■富士山の真ん前

 いち早く反対運動を始めた、「小坪の環境を守りたい有志の会」の1人が言う。

「8月11日に友人とインターネットで建設反対の署名を募り始めると、3週間で全国から1万8000件もの署名が集まりました」

 さらに逗子マリーナ周辺の住民に話を聞くと、

「先祖代々、鎌倉時代から守ってきた海沿いの町並みや、美しい景色をなんだと思っているんだろうねえ」

 と、生まれも育ちも逗子という70代男性は呆れた様子。飲食店勤務の女性も、

「逗子マリーナの南東にある披露山(ひろやま)公園の展望台は、富士山頂に太陽が重なる『ダイヤモンド富士』の絶好の撮影ポイントとして有名です。毎年全国から多くのカメラマンが集まるのに、ホテルが建つのはちょうど富士山の真ん前で……」

 もっとも、計画に理解を示す高谷清彦市議は言う。

「逗子市は市民運動が強い土地柄でね。09年に総合病院を誘致した時は、住民の日照問題をタテにした反対運動に遭って失敗。去年も逗子海岸で、海の家が流す音楽がうるさいって音楽が全面禁止になったばかり」

 当のリビエラグループは、

「反対の声が出るのは覚悟の上ですが、一部に誤解があるようです」(担当者)

 騒動はまだ始まったばかりだ。

「ワイド特集 祇園精舎の鐘の声」より

週刊新潮 2015年9月10号掲載

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