「オコエ」だけじゃない! 第一線「ハーフ選手」の家庭環境

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 スポーツ界の国際化が叫ばれて久しいが、走攻守にわたる好プレーで甲子園を沸かせた関東第一高のオコエ瑠偉(るい)(18)を見て、感慨を新たにした方も多いだろう。

「母親は千葉ロッテの内竜也投手のはとこだとのことですが、あの図抜けた運動能力を見るに、ナイジェリア人の父親の遺伝子によるところ大でしょうね」

 と取材した記者は語る。

 北京で行われている世界陸上選手権で期待を集めているのも“ハーフ選手”だ。ガーナ人の父を持つサニブラウン・ハキーム(16)。7月の世界ユースで、かのボルトを上回る記録で二冠に輝き、一躍その名を轟かせた。

「母親が高校時代に短距離でインターハイに出場していますが、父親も若い頃にサッカーをやっていたそうです」(同)

 世界陸上には出場していないが、同じく短距離のケンブリッジ飛鳥(22)の父は、ボルトと同じジャマイカ人。今年のインターハイで女子100メートルを連覇したエドバー・イヨバ(18)は、ナイジェリア人の父を持つ。昨年のユース五輪女子3000メートルで金メダルを獲得した高松望ムセンビ(17)の父親は、01年長野マラソンで優勝したケニア人のマクセル・ムセンビだ。

 世界陸上と同じ日、バレーボールのワールドカップが開幕したが、バレーボールにも期待のハーフ選手がいる。ナイジェリア人の父を持つ宮部藍梨(あいり)(17)は、181センチの長身に驚異的なジャンプ力が加わり、最高到達点は3メートル超。あいにく今大会は腰痛のため欠場しているが、次代のエースと目されている。

 バレーボールと同様に長身がモノを言うバスケットボールの世界も多士済々。父がベナン人の八村塁(17)は、身長198センチの大型センター。先のオコエ瑠偉の妹のオコエ桃仁花(もにか)(16)も181センチの長身を買われて、共に高校生で日本代表入りしている。

■アフリカで武者修行

 サッカーだと、U22代表の水戸ホーリーホック・鈴木武蔵(21)の父がジャマイカ人。ラグビーではサントリーの松島幸太朗(19)が注目だ。00年度に桐蔭学園高を初の日本一に導いた後、大学に進まず強豪国南アフリカで武者修行したのも、父親がジンバブエ人ゆえか。

 現在カザフスタンで開催中の世界柔道選手権に目を転じると、女子団体戦に出場予定のヌンイラ華蓮(24)はガーナ人の父を持つ。

「父親がアフリカ系」ばかりが続いたが、世界柔道男子90キロ級代表のベイカー茉秋(ましゅう)(20)は、父親がアメリカ人。冬の競技では、昨季スピードスケートで日本新をマークしたウィリアムソン師円(20)の父がオーストラリア人、昨季全日本フィギュアスケート9位の日野龍樹(りゅうじゅ)(20)の父がロシア人だ。

「母親が外国人」というパターンも少なくない。母親がルーマニア出身のハンマー投げ・室伏広治(40)が有名だが、サッカー日本代表で独ハンブルガーSV所属の酒井高徳(24)は母親がドイツ人。世界柔道男子100キロ超級の七戸(しちのへ)龍(26)は、ベルギー出身の母を持つ。日本のお家芸も今やハーフが不可欠なのだ。

 他にも、5月の世界卓球選手権混合ダブルスで石川佳純と共に銀メダルを獲得した吉村真晴(まはる)(22)の母親はフィリピン出身。「マハル」はタガログ語で「愛する」という意味だとか。

 ただ、今回探した限りでは「母親がアフリカ系」のアスリートはいなかった。

「インターハイの取材に行くと、ハーフ選手だらけで、隔世の感がありますね」

 と全国紙デスクが言う。

「20年東京五輪の頃には、彼らのような選手が日の丸を背負う姿が普通になるでしょう。実際、彼らは礼儀正しく、日本語も上手で、そこらの若者よりずっと日本人らしいです」

週刊新潮 2015年9月3号掲載

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