フィリピン「イスラム過激派」幹部が見舞った「徳田虎雄」徳洲会前理事長

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 かつてアルカイダと関係があったとされるフィリピンのイスラム武装組織。そのナンバー2がお忍びで来日したと聞けば、警戒されるのも当然である。しかも、彼が訪問したのは、医療法人「徳洲会」の徳田虎雄前理事長(77)の入院先であった。二人を結ぶ意外な縁とは。

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 身長は170センチに満たないものの、鋭い眼光とがっしりした体つきが特徴的な男――。モロ・イスラム解放戦線(MILF)のギャザリー・ジャファー第1副議長(62)が、徳洲会の湘南鎌倉総合病院に到着したのは7月28日である。

 今回、ジャファー副議長を案内したジャーナリストの若宮清氏によれば、

「MILFは、フィリピンにおける最大規模の反政府勢力で1970年代以来、モロ族の自治権を勝ち取るため、激しい戦闘を何度も繰り返して来ました。その犠牲者は10万人以上とも言われています」

 徳田前理事長との付き合いについては、

「コラソン・アキノがフィリピンの大統領に就任したのは1986年。私は徳田さんに頼まれ、彼女を紹介した。その時に、彼はモロ族の話を知ったのです。政府に立ち向かうモロ族の姿を、故郷である奄美の徳之島時代に経験した苦労と重ね合わせたのかもしれません。これを機にフィリピンやモロ族との交流が始まり、88年頃、負傷したMILFの兵士や家族を徳洲会の千葉西総合病院で受け入れたのです」

 ジャファー副議長は、この時、治療を受けた患者団の団長だったという。

「ジャファーは以前から徳田さんに会いたがっていたが、なかなか叶わなかった。それが昨年、フィリピン政府と和平が成立、今年6月から武装解除が始まったことによって、約30年ぶりに来日することができたのです」(同)

■『トラオがゆく』

 徳洲会といえば一昨年末、幹部10名が公職選挙法違反事件で起訴された。ただし、徳田前理事長は難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患っているため、起訴猶予処分となっている。

「ジャファーは、治療のため来日した際、徳田さんから『トラオがゆく』という自伝コミックをプレゼントされた。今回、そのコミックを携えて来日し、徳田さんに『今でも大切に持っている』と報告するつもりでした」(同)

 面会の約束は、午後3時だったが、

「徳田さんが入院している特別室は最上階の15階。ところが、約1時間待たされた末、秘書から体調不良のため面会できないと言われてしまったのです」(同)

 徳洲会関係者が明かす。

「2、3カ月前、徳田さんはほぼ危篤状態に陥ったそうです。その後、危険水域は脱したようですが、ジャファーが訪れた日も起きていられる状態ではなかった」

 若宮氏とジャファー副議長はやむなく病院を後にしたという。

「彼は、徳田さんに会って『フィリピンに病院を作ってほしい』『またMILFの患者を徳洲会病院に受け入れてもらいたい』と頼むつもりでした」(若宮氏)

 だが、徳洲会はあの事件でガタガタになり、良い意味でも悪い意味でも鶴の一声で全てが決まることがなくなった。ジャファー副議長の願いが叶う日は来るのか。

「ワイド特集 陽炎の人」より

週刊新潮 2015年8月27号掲載

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