あれから1年「朝日新聞」慰安婦お詫びは証人喚問が怖いから

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 昨年夏、自らの慰安婦報道を検証し、ついには誤報を認めて謝罪した朝日新聞。あれから1年、今も部数が下げ止まらない朝日が、あの検証をしたのは、実は読者のためでも国民のためでもなく、証人喚問から逃れるためだったようで――。

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 朝日が突然、これまで垂れ流してきた慰安婦報道を検証する記事を載せ、吉田清治氏の“慰安婦狩り”証言についての記事を取り消したのは、昨年8月5、6日のことだった。もっとも、記事は言い訳に終始したため、むしろ大いなる批判を招いたのである。

 たとえば、今年1月には上智大学名誉教授の渡部昇一氏を団長に集団訴訟が起こされ、原告代理人の尾崎幸廣弁護士によれば、

「総原告数は2万5768名になりました。今月20日に東京地裁で進行協議を行い、口頭弁論をいつ行うか、意見陳述の人数をどの程度認めるか、などを決めることになります」

 そんなこんなで、昨年8月には720万部あった部数も、670万部台にまで落ち、さまざまな締めつけが厳しくなっているという。中堅記者が言うには、

「今年3月下旬、社員が1人1部ずつ新規の読者獲得をめざす“読者紹介運動”に取り組むように呼びかけられ、締め切りは5月末だったのですが、達成率が悪く、6月末まで延長したんです。しかし編集部門の達成率は5割台で、販売から“お前らの報道のせいで憂き目に遭っているのに”という声が聞こえてきて」

 また、あれ以来、朝日の腰が引けたと指摘するのはベテランのデスクで、

「現編集幹部が慰安婦問題も含め、問題になりそうな際どい企画を取り上げたがらないのは事実です」

■組織防衛のため

 反骨を旨とする朝日らしからぬ態度だが、そういう姿勢は以前からだと、このデスクは言うのだ。

「うちの幹部が過去の慰安婦記事で国会に証人喚問されそうになったので、過去の取材を洗い直した。それが検証記事の発端になったというのは、デスク以上なら聞かされている話です」

 聞き捨てならない話だが、昨年末にまとめられた第三者委員会の報告書には、たしかにこう書かれている。

〈2012年秋ころ、安倍政権が誕生した場合には、河野談話の見直しや朝日新聞幹部の証人喚問がありうるとの話が聞かれるようになったことも下調べの動機となった〉

 慰安婦問題に詳しい東京基督教大学の西岡力教授は、

「慰安婦記事の検証は、組織防衛のためだったと見られても仕方ない」

 と呆れ、こう続ける。

「朝日が最近、慰安婦問題を大きく扱ったのは、7月2日付“『慰安所は軍の施設』公文書で実証”という記事ですが、戦場の慰安所を軍が管理したのは当然で、こうした広義の強制性を認めない人はいない。そんなことより、朝日は自らの誤報のせいで、どんな嘘が国際的に広まったかを検証すべきです。サンフランシスコ市議会に、慰安婦の碑か像を設置する決議案が提出され、朝日が報じた“20万人”という数字が記されている。朝日にはそのことへの責任意識も、日本の名誉を回復するという意識もまったくない」

 部数を回復させたければ、まずは日本の名誉を回復すべきではないのか。

「ワイド特集 陽炎の人」より

週刊新潮 2015年8月27号掲載

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