山口瞳『男性自身』傑作選 「執行猶予」(1995年6月)

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 すでに鬼籍に入ってしまったが、達人の「精神」は今も週刊新潮の中に脈々と息づいている。山口瞳氏の『男性自身』。幾星霜を経てなお色あせない厳選「傑作コラム集」。

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 癌を宣告されたら誰だって死について考えるだろう。私もそうだ。

 手術の麻酔が覚(さ)めたとき、部屋を出て行く担当教授の背中に向って「先生、本当のことを言ってくださいよ」と叫んでしまったことを記憶している。これだってずいぶん失礼な話じゃないか。医師(せんせい)は背中でもって返辞をしてくれた。...

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