医師に聞く「夏バテに“効く”のは ウナギ・肉より、ナス・味噌汁」――健康にいいのはどっちだ(2)

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 酷暑のなかお盆休みを終えても、何かと忙しく身体は休まらない。そこで夏バテにはやっぱり「ウナギ」でしょ、なんて方も多いだろう。しかし食と健康の専門家よると、意外にもその常識は間違っているようだ。夏バテ対策として代表的な二つの食材を比べてみた。

■夏バテには「ウナギ」か「ナス」か

 これはナスである。理由は後段に譲るとして、まずは古典落語の一節を紹介しておこう。『しわい屋』には、ウナギ屋の隣に引っ越したケチな男が登場する。彼は、漂ってくるウナギの匂いだけをおかずにご飯を食べるのだ。

 あるときウナギ屋は、「嗅ぎ代」の勘定を請求しにやってくる。だが、男は小銭をチャリンと鳴らし、“音”を支払って追い返す。

 今は昔ではあるものの、栄養不足の時代には、栄養価の高いウナギを口にすれば健康に過ごせると言われていた。実際、ウナギには疲労回復に効果のあるビタミンB1が多く含まれ、夏バテ防止効果が喧伝されてもいる。けち男の行動はその一端を言い当ててもいる。

 しかしながら、

「ウナギは消化も大変でかえって胃が疲れます。そういうコッテリした重いものは夏バテから回復してから食べてください」

 と異議を唱えるのは、管理栄養士の荒牧麻子氏。そして、『ヘルスプロモーション推進センター』の岩室紳也代表(泌尿器科)は、殿方に対してこんな助言をする。

「カロリー過多は高血圧、動脈硬化、血流障害、それでインポテンツヘつながりかねない。睾丸の血流も悪くなり、精子を作る力、性欲なども弱くなる。ですから、ウナギを食べるとしても、うな重や蒲焼よりカロリーの低い白焼きが良い」

 そこへ行くとナスは、

「皮にナスニンというポリフェノールの一種が含まれています。抗酸化作用があり、動脈硬化を予防する働きがある」

 と語るのは米ハーバード大で、肥満や老化などの研究にかかわってきた大西睦子医師。夏バテした身体にはうってつけだという。同様に、内臓が弱っているときに、あなたならどうするか。

■疲れているときに「味噌汁」か「焼肉」か

「肉を食べると精がつく」

 としばしば言われるが、

「科学的根拠はありません。脂質が多く、消化器への負荷が大きく、疲れているときに張り切って食べたらかえってバテる。一方で味噌には多くのミネラルが含まれ、具材も煮てあるので概ね消化が良いのです」

 と大西氏。先の荒牧女史も味噌汁に太鼓判を押して、

「汗をたくさんかくことで水分と塩分を失いますが、味噌汁は両方を同時に摂ることができる。ふだん味噌汁が食卓に並ばない家庭には“夏こそしっかり味噌汁を”と言いたいくらいです。作るのが面倒でしたらインスタントでも構いません。若い人ならミネストローネ、お年寄りであまり食欲のない方には、カボチャのポタージュやトウモロコシのスープもいいでしょう」

 要は汁もので水分を、多くの具でバランスのいい食事を、ということなのだ。

「特集 猛暑の夏の健康にいいのはどっちだ?」より

週刊新潮 2015年8月13・20日夏季特大号掲載

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