大名がほれ込んだ絶景海岸 旅行ライターが明かす絶景旅行ガイド 九州編

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 旅行ライターの高田京子氏がオススメする「気軽に行ける秘境」ガイド。北海道、本州北部、静岡、四国編にひき続いて、最後はかの大名がほれ込んだ九州の絶景秘境を紹介してもらおう。

■島津光久公が命名

 最後にご紹介するのは、真夏が似合う南の島の絶景。鹿児島県・薩摩半島の西の沖合、約30キロに浮かぶ甑島(こしきしま)列島だ。北東から南西へ、上甑島、中甑島、下甑島の3島が細長く連なり、上甑と中甑は2つの橋で結ばれている。甑島は今は海中に沈んでいるかつての山脈の頂上が海面上に残ったものと言われ、急峻な地形で平地が少ないのが特徴。ちなみに、下甑島は漫画『Dr.コトー診療所』のモデルになった島でもある。

 島で一番の見どころは上甑島の北西部に延びる「長目の浜」。大小3つの池と東シナ海の間を区分けするように、幅約50メートル、長さ約4キロの砂州が細長く延びている。江戸時代、島津光久公が巡視の際、この絶景に感銘を受け「眺めの浜」と命名したのが由来だ。

 また、下甑島の西海岸には海中から垂直に切り立った、高いところでは200メートルにも及ぶ断崖が約16キロにわたり連なる「鹿島断崖」[写真(1)]があり、観光船からダイナミックな自然の造形を眺めることもできる。

[写真(1)]海から眺める下甑島の鹿島断崖(鹿児島県)
提供:こしきツアーズ

 甑島へのアクセスは川内(せんだい)港ターミナル発着の高速船「甑島」、串木野新港発着のフェリー「ニューこしき」がそれぞれ1日2便、お盆期間中12日から16日は「甑島」の臨時便も運航しているが、お盆の間は、島内の宿はかなり混雑が予想される。「こしきツアーズ」観光コーディネーターの齊藤純子さんは、

「上甑・中甑島合わせて島内にはレンタカー16台、タクシーは3台。宿や飲食店も数が限られていて情報も少ないので、個人で手配するのは大変でしょう」

 と言うが、同社では、個人旅行者向けに「断崖クルージングと長目の浜・上甑島1泊2日の旅」など、見どころを盛り込んだ多様なプランを提供。ツアープランはお盆期間中はキャンセル待ちだが、16日以降なら余裕あり。島内で宿が手配できなければ、九州本島のいちき串木野市にある宿の紹介や日帰りプランの検討など、きめ細かく対応してくれる。

「甑島にいらしたら、キビナゴをぜひ召し上がってください。甑島はキビナゴの水揚げ量日本一なんですよ。他にも島で養殖した黒マグロや下甑島のタカエビもおすすめです」(同)

 息を呑むような秘境の絶景は、決して手の届かない場所にあるわけではない。メジャーな観光地と秘境中の秘境の間(はざま)、「気楽な秘境」を楽しむのも、「短い」今年の夏休みの一興ではないか。

 旅行ライター 高田京子

週刊新潮 2015年8月13・20日夏季特大号掲載

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