“炎天”甲子園 を睨むスカウト「閻魔帳」

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「正直言うと、この夏の甲子園はちょっと寂しいな」

 と呟くのは、さるプロ球団のスカウト氏である。

「152キロ右腕の高橋純平(3年)を擁する県岐阜商はじめ、大分商や履正社(大阪)など注目選手がいるチームが地区大会で負けてしまったからね」

 だが、嘆いているばかりでは仕事にならない、とスカウト氏はリストを片手に甲子園に通い詰める。

 では、そのリストの一部を少々覗かせていただこう。

「まず、一番楽しみなのは、147キロ左腕の小笠原慎之介君(神奈川・東海大相模3年)。東海大相模には、昨夏の県大会決勝で20奪三振を記録して注目を浴びた吉田凌(りょう)君(3年)という150キロ右腕もいるけど、左腕の方が貴重だから。西武の菊池雄星クラスに匹敵すると言っても過言ではない。ドラフト1位12人の中に必ず入ってくる」

 その菊池の母校、花巻東(岩手)には“雄星二世”との呼び声高い高橋樹也(みきや)(3年)という左腕がいて、こちらもチェック済みだとか。

 巻頭グラビアでは2人の好投手を紹介したが、まず“センバツ優勝投手”の平沼翔太(福井・敦賀気比3年)はどうか。

「彼もいい。ドラフトは3~4巡目だろうが、実は打撃もいいので、野手に転向させるかもしれない」

 あいにく佐藤世那(せな)投手(仙台育英3年)についてのコメントはなかったが、

「仙台育英といえば、ショートの平沢大河君(3年)の守備はピカイチ。体は小さいけど、ソフトバンクの今宮健太みたいになるかも」

 というわけで、そろそろ野手に目を転じよう。

 早稲田実業(西東京)のスーパールーキー・清宮幸太郎一塁手は、猫も杓子も大騒ぎしているから、ここではあえて触れないが、

「実は、三番の清宮君が地区大会で活躍できたのは、四番に加藤雅樹君(3年)という強打者がいたから。相手投手は、清宮君と勝負せざるを得なかったわけ。ただこの加藤君、打撃は一級品だけど、肩がイマイチで捕手としてプロでやっていくのは難しい。強いて良い捕手を挙げるなら、健大高崎(群馬)の柘植世那(つげせな)君(3年)くらいかな」

 そんなスカウト氏が太鼓判を押すのが、グラビアにも登場しているオコエ瑠偉(るい)外野手(東東京・関東第一3年)だ。

「身体能力がハンパじゃない。走る投げる、つまり足と肩は今すぐでもプロのトップクラスに入る。“打つ”はこれからだけど、ドラフト上位指名は間違いないだろうね」

 ちなみに、同じくグラビアで取り上げた天理(奈良)の坂口漠弥(ひろや)一塁手と船曳海(わたる)外野手(共に3年)は、「二人ともいい選手だけど、大学進学を希望している」

 という訳で、今秋の指名候補からは外れている。

■東の清宮、西の…

 九州国際大付(福岡)の四番、山本武白志(むさし)三塁手(3年)は、スカウトたちの間では別枠で話題になっているのだとか。

「お父さんが、元巨人で後にロッテ監督になった山本功児さん。長打力が魅力で、本人もプロ志望なので、ドラフト指名もありうる」

 最後に名が挙がったのは、1年生ながら九州学院(熊本)の四番を務める村上宗隆一塁手である。

「清宮君は“和製ベーブ・ルース”と呼ばれているけど、こちらは“肥後のベーブ・ルース”なんて呼ばれているらしい。清宮君同様、185センチ・83キロとガタイに恵まれた左の大砲。県大会1回戦の初打席で、いきなりバックスクリーンに満塁ホームランを放り込んだ傑物ですよ。あと2年、東西の“ベーブ・ルース”からは目が離せないね」

 今年は高校野球100周年――節目の年に聖地で輝きを放つのは誰か。

週刊新潮 2015年8月13・20日夏季特大号掲載

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