米大統領選を引っ掻き回す「D・トランプ」の毒舌

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「ボーゲンオー」が米大統領選共和党候補のトップに躍り出た。戦隊ヒーローが乗り込む正義の巨大ロボットみたいな名前だが、見た目はむしろ怪人である。

「不法移民を防ぐため、国境に万里の長城を築く」

「メキシコが送り出すのは問題のある人間ばかり。もはやアメリカはゴミ捨て場だ。ヤツらは犯罪を持ち込む。ヤツらは麻薬を持ち込む。ヤツらはレイプ魔だ」

  耳を疑う暴言を重ねながら、6月16日、出馬表明した不動産王ドナルド・トランプ氏(69)。マンハッタンのど真ん中に、セレブが住まう超高層ビル・トランプタワーを所有し、総資産87億ドル(約1兆700億円)と嘯くこの男は、ベトナム戦争で捕虜経験のあるジョン・マケイン上院議員を「捕虜になったから英雄になれた」と揶揄。ライバル候補のリンゼー・グラハム上院議員を「取るに足りない人物」と切って捨て、同議員の携帯電話番号を公開して大騒ぎを引き起こした。

「日本は米国に何百万台もの車を送ってくるが、東京でシボレーをみたことがあるか?」と日本を非難したかと思えば、中国もサウジも韓国もやり玉に挙げ、その放言の全方位ぶりから奉られた異名が「暴言王」。

 だが7月20日、米ABCの世論調査の結果は衝撃だった。有力候補ジェブ・ブッシュ、スコット・ウォーカー両氏の倍近い支持を集め、トランプ氏が共和党候補ダントツ1位だったのだ。

 外交ジャーナリストの手嶋龍一氏が言う。

「すんなり大統領候補になれるとは思えません。今は、共和党の強力な支持層であるキリスト教系右派や貧困白人層が望む“強い”候補がいないことが大きい」

 ブッシュもウォーカーも中道の穏健派。5500万人とも言われるヒスパニック系の票が喉から手が出るほど欲しいのだが、右派にはそこが面白くない。そこで「暴言王」が“受け皿”になっているのだという。

「もう一つはメディアの問題です。米大統領選で動く資金は莫大で、その大半は選挙CMにつぎ込まれます。4年間の収入を選挙期間の3週間で賄う地方テレビ局もあるほどです」(同)

 観客を沸かせ、接戦を演出しなければならないのだ。次は「DX(デラックス)ボーゲンオー」で数字を稼ぎますか。

週刊新潮 2015年8月6日通巻3000号記念特大号掲載

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